「一級建築施工管理技士」の資格取得と安全管理


建築に携わる家に生まれた私は、
祖父や父に連れられて、子どものころから
当たり前のように建築現場にいました。


建築現場は、危険のない範囲での遊び場でもありました。



祖父や父、職人さんたちに見守られながら、
現場での簡単な掃除や片付けなどを
子供の私にとっては遊びの延長のような感覚で
身につけていきました。



何気ない行動が、事故やケガにつながる前に、
必ず大人の誰かが気づき、注意を促すために
叱られたり、大声で怒鳴られたりしました。



普段は子供の目線まで下りてきて、
優しく接してくれる棟梁や職人さん達でしたが、
仕事に対する責任感や現場を納めるための厳しさ
肌で感じながら育ちました。



成長して、建築の道に進んだ私は、
子供のころから慣れ親しんだ現場が今も好きで、
多くの職方さんと協力して工程を重ね、
現場が仕上がっていくことに充足感を感じています。



そんな私は12年ほど前の2011年に、
一級建築施工管理技士」という資格を取得しました。



今回のコラムでは、この「一級建築施工管理技士
の資格についてお話させていただきます。



これから「一級建築施工管理技士」の取得を目指される方は、
参考にしていただけたら嬉しいです。





「一級建築施工管理技士」と「一級建築士」


一級建築施工管理技士」とよく対比されるのが
一級建築士」です。
「違いは何ですか?」と聞かれることも多いです。



端的に言うと、「一級建築士」は「図面のプロ」です。
計算上間違いのないものが出来るかどうか、
検証して、正確に図面を作成するための資格です。



「一級建築施工管理技士」は「現場のプロ」です。
現場での実務を行うための資格で
施工現場での知識と経験が必要です。



「一級建築士」との決定的な違いは
木造、鉄筋、鉄骨の建築現場の施工管理に
15年以上携わったことが証明されないと
資格試験が受けられないことです。



※大学や専門学校、高校などの専門課程を卒業した場合、
また、「一級建築士」などの資格を取得している場合、
必要な実務年数はずっと短縮されます。



「一級建築士」と「一級建築施工管理技士」の
両方を取得している人もいらっしゃいます。


私も「一級建築士」の取得を考えたことがあります。



しかし、当時、現場での仕事が忙しかったと言うと
言い訳になりますが、
資格試験のために図面を描いて練習する時間を作るより、
常に現場に関わりたいという現場主義の思いの方が勝ち、
「一級建築施工管理技士」の資格があればよい
という結論に至りました。



資格は、無いより有るに越したことはないので、
取るゆとりがあるならば、
取れるものは全て取っておくと良いですよ。



私の後継者が出来た際には、
資格取得のサポートも行っていきたいと思っております。





「一級建築施工管理技士」の資格試験


現在「一級建築施工管理技士」の資格試験は、
年に1度のペースで行われています。



今年2023年度の試験のスケジュールと受験料は
以下の通りです。



・申込受付期間    2023年1月27日~2月10日
・第一次検定     2023年6月11日
・第二次検定     2023年10月15日
・第一次検定合格発表 2023年7月14日
・第二次検定合格発表 2024年2月2日
・第一次検定受験料  ¥10,800
・第二次検定受験料  ¥10,800
・指定試験機関    (一財)建設業振興基金 



尚、来年2024年度のスケジュールは、
2023年12月半ばに公表される予定です。



試験に合格して資格を取得すると、
定期的な更新の必要はなく、
生涯にわたって有資格者となります。



私は、木造から鉄筋まで、また、新築からリフォームまで
現場を経験してひと通りのことを覚えた20年ほど前に、
まず「二級建築施工管理技士」を取得しました。



「二級建築施工管理技士」と「一級建築施工管理技士」の
違いは業務領域の違いです。



2級を取得すると中小規模の一般建設業の
専任技術者・主任技術者を務めることができます。



1級を取得すると大規模な建設工事をはじめ、
すべての分野の施工監理を担うことができます。



「一級建築施工管理技士」の第一次検定の学科試験
「一級建築士」レベルの問題が出題されます。



第二次検定では、「一級建築士」は製図試験を行うところ、
「一級建築施工管理技士」は、
現場での実践的な施工管理に対する論文が課され、
実務経験がなければ書けない内容について試されます。



第一次検定の学科試験については、
建築業法、建築に関わる民法、構造計算、
基礎、建て方、木造、鉄骨、ネットワーク工程表など、
出題範囲がとても広いのですが、特別な勉強をしなくても
現場が好きで様々な経験も重ねていたため、
自然に頭に入っていました。


苦戦したのが、第二次検定の論文でした。



余計な事を書きすぎたり、
出題の趣旨から少し外れた内容になってしまったり、
2度の失敗を経て、
3度目でようやく無事合格しました。



現在、建築現場に携わっている人で、
一級建築施工管理技士」の資格を取得したい人は、
現場で自分が思うこと、感じることをまとめて
自分専用の現場日誌をつけるとよいと思います。





職方の動きや入れ替わり、連携などを観察していると、
現場管理する力が自然に身につきます。



また、想像力を働かせて気付きを得ることを繰り返すと
第二次検定の論文を書く力もついてきます。



現場監督さんや独立して仕事をしたい大工さんなどは
一級建築施工管理技士」の資格取得をすることで、
自分への自信に繋がり、現場全体を見渡しながら、
周囲への気遣いなどもできるようになります。



ふくろうはうすの「チームふくろう」の職人さんも
2級からのスタートで、何名か取得しています。





現場管理で最も重要な安全管理


施工管理技士は、建築の他に、土木、電気工事など、
種類の違う資格がありますが、
共通する業務は一般的に4大管理と言われています。



工程、原価、品質、安全、この4つの管理業務が、
施工管理技士の業務内容です。



私は、この管理業務を自分流にアレンジして、
3つに絞り込んで行っています。



というのも、一般的なこの4つの管理業務に、
お客様の存在はなく、
現場業務や現場に携わる人のみを対象とした
管理となっているからです。



お客様に近い距離で現場を管理するために、
私が実行しているのは、
時間管理、安全管理、行動管理の3つです。



計画に沿ってスムーズに工事が行えるよう、
建材を調達し、職方さんの手配を行い、
お客様には、施工についての説明を行います。


また、3つの中で、最も重要なのが安全管理です。



安全性を担保するために大切なのが、
現場でのコミュニケーションです。



廃材の片付けひとつにしても、周りの環境をよく見て
職方さんのどんな動きが危険なのか安全なのか、
把握したうえで、コミュニケーションを取り、
お互いに同じ認識を持つことが大切です。



子どもの頃、施工現場で棟梁や職人さんたちが、
どれほどの目利きを行っていたのか、
現場全体を見るようになってから、
気付くことができました。



ひとたび事故が起これば、工事現場に限らず、
周辺近隣にも迷惑をかけることになります。



事故が起こることによって副次的に起こる
二次災害、三次災害を防ぐという意味でも、
安全確保安全意識が周知徹底されているか?」
が、常に問われ続けます。



東京都内でクレーンが倒れた事故や
静岡市で橋梁(きょうりょう)落下事故がありましたが、
意外と凡ミスケアレスミスから
思いがけない大事故につながることがあります。



静岡市での橋梁(きょうりょう)落下事故は、
ボルト数センチの問題だったそうです。



本来なら防げるはずの数センチでしたが、
少しのズレのために一点荷重となり
落下につながりました。



ほんの一瞬の単純ミスがたまたま偶然重なり、
大きな事故につながることを防ぐためにも、
安全管理が最重要課題です。



そのためには、基本を守ること、確認を怠らないことを
忘れず、繰り返すことが大切です。



というわけで、今回は「一級建築施工管理技士」の
資格のお話をさせていただきました。


今後も、もっと資格について聞きたい方が多いようであれば、
解説させていただきたいと思います。


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群馬県桐生市の工務店
リフォーム・リノベーション専門店
住まいの健康寿命診断士
ふくろうはうす(高橋建装)の高橋でした。


次回は「屋根・外壁塗装などのリフォーム工事の手順と段取り」のテーマで準備しています。
楽しみにしてくださると嬉しいです。

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