動的耐震診断とは何を見ているのか-建物だけでなく「家の足元」まで調べる理由


「この家は地震にどのくらい強いのだろう?」
地震の度に、気になっている方が
いらっしゃると思います。



耐震診断というと、建物の柱や壁を調べて、
耐震性を数字で表すものをイメージされる方が
多いと思います。


もちろん、それは大切なことです。


ただ、耐震性を考えるときに、
もう一つ大切なことがあると考えています。


それが、「家の足元」です。


地震の力は、
地盤から基礎を通って建物へ伝わります。



どれだけ建物を丈夫にしても、
支えている地盤や基礎の状態が不安定なら、
建物全体の揺れ方も変わってきます。



人間でも、足元がぐらぐらしていれば、
しっかり立っていることはできません。


家も同じです。


だからこそ、「建物だけ」ではなく、
「地盤と建物を合わせて考える」ことが
大切だと思っています。




目で見ただけでは分からないことがあります


住宅の耐震診断では、建物を目視で確認したり、
図面や計算から耐震性を判断したりします。


これは、現在の状態を知るための重要な方法です。


しかし、建物には目で見ただけでは分からない部分が
あります。



例えば、
•地盤はどのような状態なのか
•建物は実際の揺れに対して、どのように反応するのか
•建物のどこが揺れやすいのか
•建物全体のバランスはどうなっているのか
•基礎と建物の動きに違いはあるのか



こうしたことは、実際に振動を与えて、
その反応を見ることで分かってくる部分があります。


そこで活用するのが、「動的耐震診断」という考え方です。




「動的」とは、実際に揺らして反応を見ること


簡単に言えば、動的耐震診断は、
建物や地盤に振動を与え、
その反応を測定する診断方法です。



例えば、建物に対して一定の振動を加えます。
もちろん、建物にも地盤にも影響がない程度の
振動を加えます。



地盤や建物が何らかの形で
ダメージを受けるということはありません。



地震のような力を疑似的に与えたときに、
・建物がどのように揺れるのか。
・どの方向に揺れやすいのか。
・どの程度の時間で揺れが大きくなっていくのか。
などの反応をデータとして捉えていきます。



地震は、ただ横に揺れるだけではありません。
建物には、横方向の揺れだけでなく、
ねじれるような力も働きます。



そのため、建物全体のバランスを見ることが
重要になります。




建物だけを揺らしても、地盤までは分かりません


ここが、今回一番お伝えしたいところです。


建物を揺らして、その反応を見る。
それだけでも、建物について分かることはあります。



しかし、それだけでは
「地盤がどのような状態なのか」までは
十分に分かりません。



そこで、建物だけではなく、
地盤にも振動を与えて反応を測定します。



・地盤が硬いのか、柔らかいのか。
・どのあたりに異なる地層があるのか。
・建物を支えている足元に、気になる部分がないか。
このような情報を確認していきます。




地盤を調べる方法は「ソナー」に少し似ています


地盤に振動を伝えて、その反応を見る方法は、
イメージとしては潜水艦のソナーに少し似ています。



海の中は目で見ることができません。
そこで音波を発射し、
跳ね返ってきた反射を利用して、
海底の状態を推測します。



地盤も同じように、地面の中を
直接目で見ることはできません。



振動を伝えると、砂、土、粘土など、
地質の違いによって
振動の伝わり方や反射の仕方に特徴が出ます。



その反応を測定することで、
「このあたりには違う地層がある」
「この部分は少し軟らかい」
といった情報を読み取っていきます。



つまり、見えない地盤の状態を、
振動を利用して見える化するという考え方です。



住宅の場合、条件にもよりますが、
地表から比較的浅い範囲の地盤状態を確認することで、
建物を支えている足元について
判断する材料を得ることができます。



さらに深い地盤まで詳しく調べる必要がある場合には、
ボーリング調査など、別の調査方法が必要になります。




「建物」と「地盤」の反応を組み合わせる


動的耐震診断で重要なのは、
建物の反応だけを見ることではありません。



地盤の反応と建物の反応を合わせて考えることです。
例えば、建物に振動を加えたときの反応。
そして、地盤に振動を加えたときの反応。



それぞれのデータを比較することで、
建物がどのように地盤の影響を受けているのかを
考えることができます。



目視だけでは分からなかったことを、
数値やデータとして確認できる。
そこに、動的耐震診断を行う意味があります。




実際の診断で分かったこと


以前、動的耐震診断を行ったお客様のお住まいは、
田んぼに囲まれた場所にありました。



そのため、当初は「地盤が軟弱なのではないか」
という心配がありました。



ところが、診断してみると、
地盤は想像していたほど悪い状態では
ありませんでした。



過去に盛り土をして固め、その後、
ある程度の期間を置いていたと考えられるデータが
確認されたためです。



一方で、田んぼのへりに近い部分では、
基礎を支える地盤が若干弱含みであることも
分かりました。



つまり、
「地盤が悪い」
「問題ない」
という単純な二択ではありませんでした。



敷地全体を見たときに、
どこが比較的強く、どこに注意が必要なのか。
そこまで確認できたことが大きかったのです。




建物にも「バランス」の問題がありました


地盤だけではありません。


建物の診断では、
1階部分が大きく、2階部分が小さいという
建物形状によるバランスの問題も見えてきました。



さらに詳しく確認すると、
東日本大震災によると思われる梁の損傷や、
経年によるボルトの緩みも見つかりました。



見た目には大きな問題がないように見えても、
長い年月の中で、
建物には少しずつ変化が起こっています。



だからこそ、
現在の状態を一度きちんと確認することが大切なのです。




診断結果をもとに、必要なところだけ補強する


診断を行う目的は、
何でも補強すればいいということではありません。



・どこに問題があるのか。
・どこはそのままで大丈夫なのか。
・どこを補強すると、建物全体のバランスが良くなるのか。
などを判断するために診断を行います。



今回のお客様の場合は、
梁(はり)の補強、基礎の補強、金物の見直し、
耐震壁の追加などを行いました。



そして、建物の「剛」の部分を整えたうえで、
制震金物MAK-1を設置しました。



建物を強くするだけではなく、揺れを吸収する。
「剛」と「柔」を組み合わせて、全体のバランスを整える。
それがふくろうはうすの考える耐震・制震の一つの形です。




数字を出すことが目的ではありません


動的耐震診断では、さまざまなデータが出てきます。
しかし、数字が出れば、それで終わりではありません。



大切なのは、その数字が何を意味しているのかを
理解することです。



専門家がデータを解析し、
それをお客様に分かる言葉に置き換えて説明する。
「だから、この部分を補強するんですね。」
「ここは心配していたけれど、
それほど問題ではないんですね。」
お客様自身がご自宅の状態を
理解していただくことが大切だと考えています。




「分からないから不安」を「分かったから考えられる」へ


地震が怖い。
でも、何がどのくらい危ないのか分からない。



そんな状態では、
どこから手を付ければいいのかも分かりません。



だからこそ、まず現在の状態を知ることが大切です。
・建物
・基礎
・地盤
そして、それぞれのバランス。



見えないところまで確認することで、初めて
「では、どうすればいいのか」を考えることができます。




住まいの健康状態を知ることから


ふくろうはうすが
「住まいの健康寿命診断」という考え方を
大切にしているのも、同じ理由です。



病院でも、症状だけを見て判断するのではなく、
必要な検査をして現在の状態を確認します。



住まいも同じではないでしょうか。
「古いから危険」
「新しいから安心」
というだけではなく、
今、この家がどのような状態なのか。
それを知ることが、これからの住まい方を考える
第一歩になります。



地震への備えは、
ただ家を強くすることだけではありません。



まずは、ご自宅の現在の状態を知ること。
そして、必要なところに必要な対策をすること。



「住まい全体を見る」という視点を大切にしながら、
お客様の安心につながる診断と施工を
続けていきたいと考えています。


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群馬県桐生市の工務店
リフォーム・リノベーション専門店
住まいの健康寿命診断士
ふくろうはうす(高橋建装)の高橋でした。



次回は「耐震の「剛」と制震の「柔」- 強くするだけではない、
住まいの地震対策」のテーマで準備しています。
楽しみにしてくださると嬉しいです。

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