耐震の「剛」と制震の「柔」- 強くするだけではない、住まいの地震対策


地震への備えを考えるとき、
多くの方がまず思い浮かべるのは
「耐震補強」ではないでしょうか。



・筋交いを入れる。
・耐震壁を増やす。
・金物を取り付ける。
・基礎を補強する。
どれも大切な工事です。



ただ、私は長く住宅の耐震補強に携わってきた中で、
「家を強くすれば、それですべて解決するわけではない」
と考えるようになりました。



地震の揺れに対して、建物そのものを強くすること。
そして、建物に伝わった揺れをできるだけ抑えること。
この二つは、似ているようで役割が違います。


私はそれを、「剛」と「柔」という言葉で考えています。




「剛」は、建物そのものを強くすること即ち耐震なり


まず、「剛」ですが、
簡単に言えば建物の骨格をしっかりさせることです。



例えば、
• 耐震壁を増やす
• 筋交いを入れる
• 金物で柱や梁などを補強する
• 基礎を補強する
• 傷んだ梁を補修する
などがあります。



地震の力を受けたときに、
建物が簡単に変形しないようにする。
これが耐震補強の基本的な考え方です。



しかし、ここで大切なのが、
「どこを強くするか」です。



ただ耐震壁を増やしたり、
金物をたくさん取り付けたりすればいい
というわけではありません。




強くする場所によって、建物のバランスは変わります


建物には「重心」と「剛心」という
考え方があります。



簡単に言えば、
建物の重さの中心と、
建物が揺れに抵抗する中心です。



この二つが大きく離れていると、
地震のときに
建物が単純に横へ動くだけではなく、
ねじれるような動きをすることがあります。



例えば、
両手に同じ重さの荷物を持っていれば、
比較的バランスよく歩けます。



ところが、
片方だけに重い荷物を持てば、
身体は傾きます。



家も同じように、
補強する場所の偏りによって、
揺れ方が変わります。



だからこそ、
「どこを強くするか」
が重要なのです。




耐震補強だけではなく、「バランス」を考える


以前、動的耐震診断を行ったお客様のお住まいでも、
この「バランス」が重要なポイントになりました。



1階部分が大きく、
2階部分が小さい建物でした。



さらに詳しく調べると、
東日本大震災の影響と考えられる梁の損傷や、
経年によるボルトの緩みも確認されました。



そこで、
傷んでいるところを直し、
必要なところに補強を加えていきました。



梁(はり)には鉄板を挟み込んで補強し、
緩んでいたボルトやビスを締め直しました。



基礎についても、弱い部分には
外周増し打ち基礎を施工しました。



さらに、建物の中心部分にも
補強の基礎を設けました。



これは、単に「強くする」というより、
建物全体のバランスを整えるための補強です。




「柔」は、建物への負担を抑えること即ち制震なり


ここで登場するのが「柔」の考え方です。


建物を強くする「剛」に対して、
「柔」は、地震の揺れを受けたときに、
その力を吸収し、
建物への負担を抑えるという考え方です。



人間で例えるなら、
膝や足首をイメージすると
分かりやすいかもしれません。



もし、身体を完全に固めて、
膝も足首もまったく曲がらない状態で歩いたら、
ちょっとした段差でも
大きな衝撃が身体に伝わります。



逆に、適度に身体を動かせれば、
衝撃を受け流すことができます。



建物も、地震の力に対して
「ただ固くする」だけではなく、
揺れを抑える仕組みを組み合わせる
という考え方があります。
それが制震です。




「剛」と「柔」は、どちらか一方ではありません


これは、私が大切にしているところです。


耐震(剛)と制震(柔)は、
どちらか一方を選ぶものではありません。



「剛」で建物をしっかりさせ、
「柔」で揺れを抑える。
それぞれに役割があります。



建物の傷んでいる部分を直さず、
制震装置だけを取り付けても、
十分とは言えません。



反対に、建物をひたすら固くするだけでは、
地震の揺れそのものを小さくすることは
できません。



だからこそ、
足元を整える。
建物を補強する。
そして、揺れを抑える。


この順番とバランスが大切だと考えています。




MAK-1は「柔」の役割を担います


私たちが長年取り扱ってきた制震金物の一つに、
MAK-1があります。



MAK-1を設置することで、
建物をさらに「固くする」というよりも、
地震による揺れを抑える役割を持たせます。



つまり、耐震補強とは違う仕事を
しているわけです。



「剛」の補強を行ったうえで、
「柔」の制震を組み合わせる。



それぞれが違う役割を担うことで、
建物全体として地震への対応力を高めていく。
ふくろうはうすは、
この組み合わせを大切にしています。




だからこそ、最初に診断することが大切


では、どこを補強して、
どこに制震装置を設置すれば
いいのでしょうか。



そこで、前回お話しした動的耐震診断が
関係してきます。



診断をせずに、
「ここが空いているから耐震壁を入れましょう」
「ここに制震装置を付けましょう」
と決めるのではなく、

今の建物がどう揺れているのか。
どこに負担がかかっているのか。
地盤や基礎はどうなっているのか。
建物のバランスはどうなのか。

それらを確認したうえで、
必要な場所に必要な補強を考えていきます。




「強い家」ではなく、「バランスの良い家」を目指す


耐震という言葉を聞くと、
「とにかく強くすればいい」
と思われるかもしれません。



しかし、目指しているのは、
単純に「強い家」ではありません。



地盤、基礎、建物、そして制震。
それぞれがきちんと役割を果たし、
全体としてバランスが取れていること。
これが大切だと考えています。



地震は、建物に対して
単純に横から力を加えるだけではありません。



建物を揺らし、ねじり、さまざまな方向から
力を加えます。



だからこそ、
一部分だけを見て判断するのではなく、
住まい全体を見る必要があります。




「剛」と「柔」は、対立するものではありません


「剛」と「柔」というと、
正反対のもののように感じます。



でも、実際にはそうではありません。
強くすることと、揺れを抑えること。
この二つをうまく組み合わせることで、
より良い地震対策につながります。



ふくろうはうすでは
「不協和音にならないように組み合わせる」
と考えています。



どこか一部分だけが強すぎても、
全体のバランスが崩れてしまいます。



だからこそ、診断結果を見ながら、
建物全体のバランスを考えていきます。




大切なのは、「何を付けるか」ではなく「なぜ付けるか」


耐震補強や制震について調べると、
さまざまな商品や工法が出てきます。



どれが一番良いのか、
迷われる方も多いと思います。



でも、本当に大切なのは、
「何を付けるか」よりも、
「なぜ、それが必要なのか」
ではないでしょうか。



今のお住まいに何が起きているのか。
何が弱いのか。
どこを補えばバランスが良くなるのか。
そして、その補強にどんな役割があるのか。



そこを理解してから工事を選んでも、
決して遅くはありません。




住まいの状態を知ることが、地震対策の第一歩


地震への備えは、
建物をただ強くすることだけではありません。



まず、今のお住まいがどのような状態なのかを
知ること。



そして、地盤や基礎を含めて全体を見渡し、
必要なところに必要な対策をすること。



「剛」で守る部分と、「柔」で受け止める部分。
その両方をバランスよく考えることが、
ふくろうはうすが大切にしている地震対策です。



これからも、お客様に
「何となく安心してください」
とお伝えするのではなく、
「こういう状態だから、こういう対策をしましょう」
と、理由をきちんと説明できる仕事を
していきたいと思っています。



住まいの安心は、
工事をしたという事実だけではなく、
「なぜ、この工事をしたのか」を
お客様ご自身が理解できることから
始まるのではないでしょうか。


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群馬県桐生市の工務店
リフォーム・リノベーション専門店
住まいの健康寿命診断士
ふくろうはうす(高橋建装)の高橋でした。



次回は「『家や地盤を揺らして大丈夫?』
動的耐震診断の気になるところ」のテーマで準備しています。
楽しみにしてくださると嬉しいです。

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