おはようございます。
こんにちは。
こんばんは。
秋が深まってまいりましたが、風邪をひいてはいませんか?
リフォーム・リノベーション専門店、ふくろうはうすの高橋です。
今回のコラムは
話題になっている「純木造建築高層ビル」の
耐震性や木材について
私的な見解を交えながら、お話したいと思います。
10月に、木造注文住宅を手がける株式会社アキュラホームが
純木造8階建ての新社屋を建設すると発表しました。
高層ビルといえば、通常は重量鉄骨造や鉄筋コンクリート造
という印象が強いですよね。
あなたは、
木造建築で高層ビルは建つのだろうか?
木材で十分な強度はあるのだろうか?
という疑問が湧いてきませんでしたか?
建物に求められる要素で、最も大切なのは耐震性です。
そこで、この耐震性についてフォーカスしてみたいと思います。
木造建築の耐震性は?
実は、日本には耐震性に優れた
日本古来の建物があります。
それは、五重塔です。
五重塔、三重塔などの木塔は日本全国に
500ヶ所以上ありますが、
地震で倒れた事例はほとんどありません。
約100年前に発生した関東大震災でも五重塔は無事でした。
当時、近代建築と言われていた八角タワー
(凌雲閣(りょううんかく):10階までレンガ造り、11、12階は木造)は
8階より上が崩壊してしまったのですが、
ほぼ同じ高さの五重塔はそのままの姿で悠然としていました。
五重塔は、揺れに耐える耐震ではなく
揺れを吸収する制振という仕組みで、
各層がバランスを取って
横倒しを防ぐつくりになっています。
現存する五重塔の中で最古のものは
7世紀に建てられた法隆寺の五重塔で、
1300年もの年月を経ています。
日本古来の五重塔が、木造高層建築の原点であり、
現在もその工法が採用されています。
また、理論上、15階くらいまでの木造高層ビルの建設は可能です。
そして、日本一の高さを誇る東京スカイツリーも
鉄骨で組んではいますが、
実はその東京スカイツリーも
五重塔の理論をそのまま再現した制振システムを用いています。
東日本大震災時は、まだ工事中でかなり揺れましたが
作業員は全員無事で、スカイツリーの構造体も無事でした。
高所で作業されていた方々は
生きた心地がしなかったことでしょうが
工事中にも地震対策がしっかりとられていて
大きなダメージを事前に防ぐことができたそうです。
日本伝統の建築要素である制振という技術は
力を入れるところは入れて、抜くところは抜くというやり方です。
人の身体に例えると、骨格のバランスを整えるようなもので
緊張(ストレス)と弛緩(リラックス)の
メリハリをつけることに非常に長けた方法です。
格闘技においても同じようなことが言えます。
例えば、柔道であれば、ガチガチに力を入れ過ぎると
押さえつけられて一本負けしやすくなり、
逆に自然体で構えている方が、ここぞという時に踏ん張れる
まさに制振技術の強さです。
耐震から制振時代への変化
最近まで地震対策は、
揺れにひたすら耐えるという耐震を中心とした
対策が主流でした。
耐震施工は基本的に
土台や柱などの骨組みを金物で固定したうえで
柱と屋根をまた金物で固定する方法を採用しています。
そして、柱の上下が金物でがっちり固められています。
熊本地震ではこのような耐震施工を施された
家屋の倒壊被害が多数発生しました。
金物でしっかり固めてあったはずなのに、
新築から1~2年しか経たない家がバタバタと
倒壊してまったのです。
1回目の地震で、金物では耐え切れなかった部分に
ダメージを受けて、木材が割れ、
2回目の地震では、木材全体にヒビが入って
建物が崩れるという経緯をたどりました。
その反面、昔ながらの建て方で木材のバランスを取って
リフォームされていた家は倒れず無事でした。
詳しく解説すると
大工さんが木材に「ほぞ」と「ほぞ穴」を作って
強さと美しさを兼ね合わせた熟練した技で
木材同士を自然体できっちり接合して建てられた家です。
「ほぞ」とは、2つの部材を接合する時に
部材の小口に作る凸型の突起のことで、
突起を受ける側の部材に作られる凹型の穴を
「ほぞ穴」と言います。
昔の家は、柱と梁(はり)を作ったあと、
ほとんど筋交い(すじかい)を作っていませんでした。
柱とは、土台から垂直に立てて、床、壁、屋根などを
支える部材のことです。
梁(はり)とは、柱と柱を繋いで水平に渡される部材で
柱を固定し、屋根などを支えます。
筋交い(すじかい)とは、柱と柱の間で斜めに渡す部材で
建物を補強することができます。
昔は、斜めに渡す筋交(すじかい)を作らず
柱と柱の間に、通し貫(とおしぬき)と言う
細い木を水平に貫通させて壁の下地を作っていました。
こうすることで、バランスがよくなり
木材が本来持っている力を最大限に
発揮させることができました。
金物に頼らず、木材同士の粘りでバランスを取って
地震の時に揺れを逃がすことができます。
熊本地震を経験して、
揺れには制振の方が効果が高いと証明されたため
耐震より制振がクローズアップされるようになりました。
国産木材の復活は?
木造建築で日本伝統の制振技術を活かして
強くて美しい建物を建てるためには
材料となる木材の選び方も大切になります。
最近になって、
木のやわらかさ、ヒーリング効果などが見直され
また、外材が足りないという現実もあり、
国産の木材を復活しようという動きが出てきました。
ところが、
植林して木を育て、成長したら伐採して木材を使うという
日本の循環型の林業が、30年ほど前から衰退してきて、
機能しなくなっています。
今になって復活させようとしても
山から木を切り出して、近場の製材所で製材して
流通するという流れが分断されています。
杉の伐採適齢期は50~70年と言われており、
戦後に植林した杉が全国で伐採適齢期になっていますが
放置されたままです。
そこで、皆伐(かいばつ:一定区間の樹木を全て伐採)して
使える木材だけ持っていき、それ以外は切り倒されたまま
という山が少しずつ増えてきました。
大きくなりすぎた木は切る機械がなく
製材することもできないため、
切りっぱなしで放置されます。
皆伐によって、はげ山へと変化している場所は
日本全国に広がっています。
木がなくなると根っこが枯れて、
土が雨によって流され、土石流になる可能性もあり、
台風や自然災害などの被害が懸念されます。
7月には静岡県熱海市で土石流災害が発生しました。
この土石流の原因は不法に積み上げられた盛り土でした。
住宅地から遠く離れた山の中で行われていることは
普段の生活で目に付かないため、
住民が気づかないうちに災害の原因となる不法な盛り土が
行われていたという経緯がありました。
木造に戻ろうという雰囲気は自然や林業を見直し
山や木を育てる大切さに気づくために
よい風が吹いていると思います。
農業はもちろんのこと、林業や建築業でも、
地区で取れたものをそのままその地区で使う
「地産地消」が最適です。
地元の木材を使って家を建てることを目標にした
「地産地消」の活動に、私も20年以上、
参加させてもらっています。
家の近くの山の木を使って家を建てると
土地の気候や風土とも合うので、
住まいの健康寿命診断士の立場からも
住まいの寿命を延ばすことができると言えます。
桐生市で幼稚園を木造に建て替えるという
施工を2件請け負わせていただきました。
いずれも、地元桐生市や近辺から集めた杉材を
ふんだんに使った建物です。
すると、園児どうしのケンカが減ったとか
しょっちゅう頭痛を起こしていた園児が、
建て替えた木造の建物で過ごすようになると元気になったとか
木の癒し効果を感じるようなご報告をいただきました。
木造は高層ビルでも耐えることのできるしなやかさを持ち
人の心にも身体にも優しい癒しの空間を作ることもできます。
木造建築高層ビルについての結論
建物は揺れても元に戻る復元作用があり、
もともと木造建築はその特性を持つ建物です。
揺れて傾きっぱなしではなく、
揺れた分だけ元に戻ろうとします。
振動を吸収することを止めてしまえば
あちこちにダメージが集中してくるため
柔軟に作るのが木造の基本です。
おそらく純木造8階建て高層ビルの工法には
制振という要素が多いに含まれていると思われます。
昔ながらの技術を取り入れて柔軟性を持たせ
建物を頑丈にする剛性を併せ持つように
建てられるのではないかと考えています。
あなたは木造建築高層ビルについて
どのようなご意見をお持ちですか?
そして、このコラムを読んでどう感じましたか?
是非、あなたのご意見やご感想をお聞かせ下さると嬉しいです。
お家を耐震から制振へ特化したリフォームをしたいとご希望の方へ
あなたに合ったリフォームをご提案しますので
まずはご要望をお聞かせください。
また、お住まいのお困りごと、お悩みなどございましたら
「住まいの健康寿命診断士」の私、高橋まで
お気軽にご相談くださいね。
次回は
「日本の木造建築における古き良き伝統工法と制振装置MAK-1(マックワン)とは?}
をテーマにお話します。お読みくださると嬉しいです。
最後までお読みくださり、ありがとうございます。
追伸:
木造建築では、材料となる木材の選び方が大切になります。
木材の耐久性について比較した記事がありますので、
参考にしていただけると嬉しいです。