「住まいの健康寿命」を左右するポイントに
建物の構造自体がしっかりしているかどうか、
使われている部材(建材)の耐用年数に合わせて、
適切なタイミングでメンテナンスされているかどうか、
などなどあります。
おはようございます。
こんにちは。
こんばんは。
リフォーム・リノベーション専門店
ふくろうはうすの高橋です。
これまでのコラムで、
木造建築について様々なお話をしてきました。
今回は木材の耐久性についてお話をします。
内部から家を支える骨組みとして使われる建材や、
外部から家を守る屋根・外壁材の状態によって、
家全体の耐用年数は大きく変わります。
建築木材として優秀な「樹齢70年生杉」の耐久性
建築木材としてよく使われる木材の一つ、
杉を例にしてお話をします。
「樹齢70年生杉」と呼ばれる杉材は、
樹齢70年前後で伐採されますが、
時間をかけて自然乾燥した後、製材すれば、
柱として樹齢の2倍~2.5倍くらいの耐久性を持つ
と言われています。
伐採されてから、140年~200年ぐらいは
弾力性、靱性(じんせい:粘り強さ)が維持され、
たわみなく荷重を支えられるのです。
更に、適切なタイミングで伐採し製材されると
樹齢の2倍~3倍の期間、耐久性が保たれると言われています。
木は切ってからも生き続ける!?
地元群馬県桐生市は杉の産地でもあるため、
子どもの頃は祖父に連れられ、おにぎり1つ持って、
知人の山主の杉林の手入れを手伝いに行ったものです。
下草を刈り、枝打ちをして、手入れをするのですが、
太陽光が幹から枝までまんべんなく当たるように
整えられて育った木は、非常に安定していて丈夫です。
良い環境で丈夫に育った木を適切な時期に山から切り出し、
製材所でしばらく寝かせて自然乾燥してから製材する
という流れが、昔は当たり前に行われていました。
伝統工法で建てられた住宅の構造体には、
このような耐久性に優れた木材が使われています。
住宅の柱を建てる位置を決めることを「番付」と言いますが、
伝統工法では、山の東西南北のうち、
木材が、どの斜面でどの方向に生えていたのかを踏まえて、
家のどの位置の柱にするのかを決めるのが基本でした。
住宅の柱として配置する際も、
山に生えていた時と同じ方角、向き(位置関係)に建てると、
『木は切ってからも生き続ける』と言われています。
木は内部に脂を閉じ込めて保護する作用があり、
弾力性や靭性(じんせい:粘り強さ)を保っています。
40年前に建てられた住宅をリフォームした際に、
伝統工法の素晴らしさを実感することがありました。
柱に使われていた木材の強度を確認するために
ノコギリで切ってみると、40年経っているのにもかかわらず
脂気と粘り、香りがしっかりと残っていたのです。
また、私の妹家族が暮らす築160年の古民家を
リフォームさせていただいた時にも、
柱として使われている木材に脂気が十分にあり、
強度も保たれた見事なものばかりでした。
一方、山に生えていた時の配置関係を無視して
配置された住宅の柱の場合、木材に脂抜けがあり、
ノコギリを簡単に入れることができます。
同じように時間をかけて自然乾燥して、製材した木材でも、
山に生えていた時と同じ方角や配置で建てられているか否かで
「住まいの健康寿命」が変わることを身を持って体感しました。
現在出回っている無垢材は、自然乾燥ではなく、
強制的に乾燥させた木材があり、
脂分の抜けが早い印象があります。
木が本来持っている弾力性や靭性(じんせい:粘り強さ)を
活かし切れない残念な状態です。
無垢材を選ぶなら、2022の今は、
檜(ひのき)の自然乾燥材を選んでおけば間違いないです。
伐採適齢期を過ぎた檜(ひのき)が少しずつ市場に卸されていて
手に入りやすくなっています。
集成材の強度は15年が限界?
昭和40年代の高度成長期には、
断面寸法の小さい木材を接着剤で貼り合わせて圧縮した「集成材」や、
2つ以上の異なる材料を一体的に組み合わせた「複合材」が、
国内外で出回るようになりました。
国産木材が少なくなってきたこともあり、
住宅建築では無垢材の使用が減り、
集成材が多く使われるようになりました。
集成材の初期強度は無垢材の1.5倍ほどあると言われていますが、
年数を重ねるほどに接着面の強度が落ちていきます。
新築を希望されるお客様から、
「集成材は強度があって安定していると聞いたので、
それを使っていただけますか」
とご相談いただくこともあります。
新しく開発された建材は、使われ始めてからの年数が浅く、
何十年もの実績もないため、強度の持続性については
未知数というのが正直なところです。
1980年代後半から1990年代前半にかけて、
海外の集成材メーカーから大量に輸入され、
住宅の柱や梁に使われた構造用の集成材に剥離が起こり、
問題視され始めています。
その集成材のメーカーは、保証期間は15年間であることを
明確にしています。
理由は、接着強度がそれ以上持つかどうか未知数だから
とのことです。
集成材は、断面寸法の小さい木材を接着剤で貼り合わせ、
圧縮して一体化した木質材料のため、
接着力が落ちると強度も低下してしまう可能性が高いです。
当時はいい建材だと言われていて、
全国の相当数の建物に使われていますが、
その時期に新築された住宅がちょうど築20年~25年です。
リフォームして暮らしの変化を楽しみたいと思っていたら、
家の構造体を見直す必要が出てきたというお客様から、
実際、「ふくろうはうす」にも何件かご相談をいただいています。
結局、集成材と無垢材、どちらを使った方がいい?
新築時には家の骨組みに使われる構造材として
集成材と無垢材、どちらを選択するか迷われると思いますが、
「住まいの健康寿命」を考えると無垢材がおすすめです。
無垢材は高いというイメージがありますが、
構造材だけを無垢材にするのであれば、
集成材のみを選んだ場合と比べて
初期投資の費用はあまり変わりません。
床面積30坪ぐらいの総二階の住宅で木造軸組工法だと、
構造材にかかる費用は200万円弱くらいですが、
加工代を含めた無垢材と集成材の費用の差は5%~8%ですから、
13万円前後です。
ただ内装や仕上げ材まで全て無垢材にこだわる場合は、
コストはかなり変わってくるので、
仕上げにどれくらいウエイトをおくか、検討が必要です。
家の骨組みとなる構造材を中心として、
国産の無垢材などのよい木材で建てられた家は
「住まいの健康寿命」を長く保つことができ、
適切なメンテナンスを施すことで、
安心、安全、快適な暮らしを手に入れることができます。
お住まいを見直される時に、今回の記事が参考になれば嬉しいです。
お住まいについてのお悩みがある方は
「住まいの健康寿命診断士」の私、高橋まで
お気軽にご相談下さい。
リフォーム・リノベーションについての疑問やお見積りなども
お気軽にお問い合わせくださいね。
次回は「住宅建築の変革と中古住宅を判断、活用するための
『住まいの健康寿命診断』」のテーマでお話します。
お読みくださると嬉しいです。