おはようございます。
リフォーム・リノベーション専門店
ふくろうはうすの高橋です。
前回まで、リフォーム・リノベーションの
落とし穴となる不具合について、
「住まいの健康寿命診断士」の視点から
様々な事例の解説をしてきました。
リフォーム後の不具合事例を複数回にわたりご紹介してきました。
今回、5回目の記事は、不具合事例最終回となります。
4回目までの事例は、こちらからご参照ください。
屋根、外壁、塗料、ウッドデッキと
外回りの不具合についての解説をしてきましたが
最終回の今回は、
家の中で気づいた違和感から導かれた
お家の構造上の不具合についてお話します。
ご家族の成長やライフスタイルの変化によって
住まいのあり方も変わってきます。
今回の事例では、
子どもさんが成長して部屋数が足りなくなり、
平屋のお住まいに2階を増築したお客様から
ご相談をいただきました。
事例5:2階の増築で全体が歪んできた家
相談内容
お客様のお話によると
2階の部屋を使っている娘さんが
「扉が開け閉めしにくいし、床が平らではない感じがする。」
と不具合について話されたそうです。
「どうなっているのか、見てもらいたい。」
とご連絡をいただきました。
住まいの健康寿命診断をしてみると
お客様のお住まいに訪問してみると
昭和初期(70年前)に建てられた平屋に
2階が増築されていました。
2人の娘さんのための子供部屋が必要になり
30年前に建て増しされたそうです。
その頃は建築基準法の規制が
それほど厳しくなかったため、
平屋を増築して2階建てにする施工が
多く行われた時期でもありました。
しかし、建て増し時の施工状態によっては
構造体と呼ばれる建物の骨組みに負担がかかって
大きなトラブルに繋がることがあります。
お客様宅に上がらせていただくと
1階はキッチンの辺りが沈み込んでいるように
感じました。
2階への階段を上り始めた瞬間に
平衡感覚がおかしくなる感じがあり、
上ってみると2階はかなり傾いていました。
家の傾きを放っておくと、平衡感覚が乱れて、
身体に負担がかかり、体調不良に繋がります。
症状が重くなると、
めまいや頭痛、吐き気、浮遊感などが表れます。
さらに重度になると、強い疲労感や食欲不振、睡眠障害など
深刻な健康被害へと繋がる恐れもあります。
増築によって家全体が歪んだ原因と対処法
通常は、木造建築で2階建てを施工する時は
土台から2階までをつなぐ通し柱を
建物の4隅に設置します。
通し柱とは、土台から軒まで通った
継ぎ目のない柱のことです。
通し柱と通し柱を水平につなぐ部材を
胴差し(どうさし)と言い
建物の外側をぐるりと囲み固定させます。
胴差しは2階の床を作る土台となります。
こうして、1階と2階とを構造的に一体化し
耐震性や耐久性を高めます。
平屋に2階を増築する場合には
4隅に通し柱を設置し
2階の過重負担をなるべくかけないように
1階を補強することが必須条件となります。
それにもかかわらず、
1階の補強がされていなかったため
建物の4隅の強度が弱い方へと引っ張られ、
少しずつ沈下が進んだものと考えられます。
2階の重さを支え切れなくなった弱った柱に更なる負荷がかかり
1階北側のキッチンの辺りが沈み込んでいました。
沈下による歪みが発生したことで
2階は扉の開け閉めに支障が出ていました。
また、2階は横になっても寝ていられないほど
傾きが進行しておりました。
2階でずっと過ごしている娘さん達は
「こんなものなのかな?と思いながらも
気持ち悪かったのです。」
と話されていました。
飼い猫は敏感なようで、
歪みのない平らな場所ばかりで
過ごしていたようです。
このまま放置すると、歪みが進行して、
住めなくなる可能性が高くなります。
家の構造を詳しく調べてみると、
1階は構造体に天然乾燥の杉材が使われていて
木材の強度も十分でした。
建て増しした2階よりも
構造体がしっかり丈夫で
安定していました。
ご家族に、お話を伺うと
2階の増築後、数年たってから、
だんだん建具やサッシの開け閉めが
スムーズにいかなくなったそうです。
しかし、日常生活を送るのに
さほど支障がなかったため
特に気にすることもなく
過ごしてきたとのことです。
このまま2階を使えることが
娘さん達のご希望とのことでした。
2階の重さを支えることができれば
1階は元々丈夫に作られているので、
補強すれば十分持ちこたえることができると
判断しました。
そこで、沈んでいるところを持ち上げて
建物を水平に補正しながら、
耐震に対する補強も加えて
傾きやゆがみを直す施工を行いました。
人の身体でも骨や骨格が歪んでしまうと
内臓に負担がかかってきます。
歪みを調整してバランスを整えると
背筋が伸びて、内臓も元気になりますよね。
余談になりますが、
熊本地震の時、リフォームを行った家で
補強がされてなくて崩れたのは
平屋に2階を増築した家が圧倒的に多かったのが事実です。
家の構造が大きく変わるリフォーム・リノベーションのポイント
これまで、外見は綺麗に整えられているのに
普段隠れて見えない建物内部の
構造やバランスが悪いお住まいを
何軒も見てきました。
重心がズレたり構造上の安定感がなくなると
少しずつ、ひずみが生じます。
せっかくリフォームをしたのに、
耐震性が弱くなるばかりでなく
健康被害が心配されるような歪みが生じることは
本来あってはならないことです。
家の構造が大きく変わるリフォーム・リノベーションは
人の身体で例えると大手術をするようなものです。
まず、設備などが整った総合病院で
診察を受けて、様々な種類の検査を実施します。
次に、検査結果を基に、様々な情報が集められ
患者さんの症状に最も適した治療が決まります。
そして、看護師、麻酔科医、外科医など
専門家が連携して手術が行われます。
家の大手術とも言い換えられる、
大がかりなリフォーム・リノベーションを計画する時には
家の基礎、骨組みを視野に入れ、
建物を総合的に診ることができる専門家に
ご相談されることをお勧めします。
「住まいの健康寿命診断士」は
お客様の暮らしと思いに寄り添いながら
お住まいの痛みや不具合をプロ目線で検査・診断し、
その症状にあわせたリフォームやメンテナンスの方法を提案する
「住まいの総合病院」です。
「ふくろうはうす」は、
「住まいの健康寿命診断士」の私、高橋と
大工、建具、板金などの職人さんがタッグを組んで、
『チームふくろう』として活躍しています。
「チームふくろう」は「家守り」として
「お客様の家族やお住まいを守りたい」という誇りを持って、
「御志事(おしごと)」に取り組んでいます。
あなたはお住まいについて何か気がかりなことはありませんか?
また、リフォーム・リノベーションで迷っていることなど、
ありましたら、私、高橋まで、
お気軽にご相談くださると嬉しいです。
リフォーム後に起こった不具合に関する
5つの事例のお話はこれで完結となりますが、
今後も、参考になりそうな事例があれば
ご紹介していきますね。
次回のテーマは、
「リフォーム・リノベーション難民はなぜ生まれる?」
です。次回も読んでいただけると嬉しいです。