前回のコラムで築100年近くになる
古民家再生リノベーションについて
お話させていただきました。
もともとの小舞壁(こまいかべ)の土壁を残し、
部分的に耐力面材を張ることで、
耐震補強プラス制震という要素を残しました。
耐震と制震の両方のバランスを上手く
考えて補強を施したことが特徴の一つです。
今回は、
制震という考え方で建てられた古民家を
現在の耐震という考え方に合わせて、
構造補強するための方法について、
また、昔、用いられていた和算について
お話させていただきます。
古民家再生のための構造計算
重心点(重さの中心)と剛心点(強さの中心)を
なるべく近づけると
建物のバランスが良くなります。
そのため、構造計算を行いますが、
小舞壁(こまいかべ)は、
耐震性がないとしてゼロとします。
建築基準法が施工される以前の建物については、
「耐震等級」という概念がなかったため、
数値化することができないという考え方からです。
そのため、昔の工法の小舞壁(こまいかべ)は、
現在の構造計算には、数値として入りません。
しかし、昔は、制震という揺れを逃がす考え方で
建てられていて、揺れに強い壁ということは
十分理解していたため、今までの経験値を元に、
小舞壁(こまいかべ)の耐震の数値を
おおよそ0.7として、
全体の耐震等級はどのくらい上がるのか
最終的に判断しました。
そうしなければ、重心と剛心が
出ないため、みなしで計算するという
考え方とでも言いますか…。
そこで、このみなし計算について、
秋田県の構造設計が得意な設計事務所さんに
お問い合わせをさせていただきました。
得意な人に聞いた方が早いと思い、
机上の空論ではなく、
実際に古民家再生を手掛けながら、
実証実験をされているこの設計事務所さんに
相談してみようと思ってのことです。
実は、この設計事務所さんとは
20年ほど前にお話させていただく機会があり、
それ以来のお声がけでしたが、
当時のことを憶えていてくださり、
快く対応してくださいました。
当時、日経ホームビルダーという情報誌があり、
地熱を使った循環システムの提案という記事で
私のことを特集していただいたことがあり、
同じ月の別の特集として、掲載されていたのが、
この秋田県の設計事務所さんでした。
この時の設計事務所さんの特集記事が、
古民家の再生という内容で、
古民家の構造計算のためのソフト開発の話を
されていたため、
詳しいお話をお聞きしたくて、当時も直接、
ご連絡させていただいたという経緯がありました。
すると、
私の地熱を使った循環システムの記事に
興味を持っていて下さったとのことで、
お互いに、様々な話をさせていただき、
非常に盛り上がり、楽しかったことを
よく憶えています。
20年以上を経て、ご連絡を差し上げ、
「見かけ上は、こういう計算になるのですが…」
とお話させていただくと、
「懐かしいですね」から始まった会話は、
当時と同じように盛り上がりました。
情報誌「日経ホームビルダー」
「日経ホームビルダー」は、当時、
建築技術の情報をいろいろな人が投稿していて、
面白い内容だったため、定期購読していました。
気になる記事を見つけると、
投稿された人とお話したくなり、
近場の場合は、お伺いしたこともあります。
一方的に聞くだけではなく、
私の知っている知識や研究している内容なども
お話させていただき、お互いに意見交換しました。
そんな時、一番盛り上がったのが和算の話で、
昔の構造計算を和算で行っている人が
思っていた以上に多かったです。
残念ながら、
「日経ホームビルダー」は、
2021年3月号をもって休刊となりました。
以前のように、
現場に携わる人の生の情報を聞く機会が少なくなり、
寂しいという思いがあります。
江戸時代に発展した和算、現在の教育は西洋数学
先ほど、お話させていただいた和算ですが、
現在、学校では、西洋数学を教わるため、
和算のことを知っている人は少数です。
上毛かるたの中に
「和算の大家、関孝和(せきこうわ)」
とあり、地元、群馬県に
和算を研究し発展させた人がいらっしゃいます。
江戸初期に 円周率を12けたまで求め、
和算の発達に尽力された人物です。
明治以降は、日本の数学は西洋数学を
中心とした教育に切り替わりましたが、
和算を現在数学に置き換えて研究している人も
少なからず、いらっしゃいます。
和算を使って計算されている建築業の人と
「昔の大工さんはどうやって計算したのだろう?」
「屋根のそりや曲がりは?」などと話をしていると、
和算を使った昔の建物ほど、
結構緻密な計算をされていて、
理にかなっていると思われる部分があります。
その他に、和算を使って計算された
その地域ごとの特性的な数値もあります。
特性的な数値とは、
例えば、台風時の風や、群馬のからっ風など、
その土地で特有に発生する影響を
いかに緩和するかという、独特の数値などのことで、
そのような数値も和算で、はじき出されています。
日本古来の和算は、
現在の西洋数学と比べても遜色ない計算方法で、
江戸時代の寺子屋では、
遊びから和算が取り入れられていました。
あなたは、「つるかめ算」を
解かれたことはありますか?
「つるかめ算」は、子どものための和算です。
興味のある方は、挑戦してみてくださいね。
【例題】つるとかめが合わせて80匹います。
足の数の合計が200本のとき、
つるとかめはそれぞれ何匹でしょう?
(答は、コラムの最後にあります)
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住まいの健康寿命診断士
ふくろうはうす(高橋建装)の高橋でした。
【例題の答】つるが60匹、かめが20匹でした。
【例題】つるとかめが合わせて80匹います。
足の数の合計が200本のとき、
つるとかめはそれぞれ何匹でしょう?
【例題の答の解説】
全部つるの場合、足の数は80匹×2本=160本。
しかし、足の数は合計200本のため、
200本-160本=40本 となり40本不足します。
そこで、足の不足分だけ、
つるをかめに変えていきます。
かめの足の数は、つるの足の数より2本多いため、
40本÷(4-2)=20となり、
かめの数は20匹となります。
80匹-20匹=60匹 となり、
つるの数は60匹となります。
次回は「『二世帯住宅リノベーション』のプランとふくろうはうすの
『住まいの健康寿命診断』」のテーマで準備しています。
楽しみにしてくださると嬉しいです。