早いもので10月も残すところあと2日となり、
秋が深まってまいりました。
桐生市内でも、少しずつ紅葉が色づき始めています。
寒い冬が来る前の穏やかな時節に
紅葉狩りを楽しみたいですね。
群馬県桐生市で「紅葉」と言えば、
宝徳寺さんの「床もみじ」が有名で、
多くの人が訪れる人気スポットになっています。
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庭の景色が映り込む鏡のような床を
実は、5年ほど前の2018年に、ふくろうはうすが
施工させていただきました。
今回は、宝徳寺さんのピカピカの床の施工について
お話させていただきます。
宝徳寺さんの本堂の天井裏にある空調設備
宝徳寺さんのご住職と私は同級生で、
小学生のころからの知り合いです。
ご住職は、お寺を訪れる人を楽しませたいと、
ご自身で重機を使って庭石を配置したり、
シャクナゲやボタンを植えて、庭を整えたそうです。
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本堂を建て替え、空調設備を設置する際には、
冷風を感じることなく、
広い空間がまんべんなく涼しくなり、
しかも、空調設備を目立たせないなどの条件で、
複数社から見積もりプランを取ったそうです。
小学生のころからテレビを修理したりと、
電気製品で遊んでいた私にも、
良い方法はないかと、相談を持ち掛けられました。
そこで、ありきたりの方法では、
条件を全てクリアするのは難しいため、
本堂の天井裏をそっくり空調にしてはどうかと
提案しました。
天井裏に大型エアコンを稼働して冷房する
イメージですので、
下の大広間から設備は全く見えません。
夏場の外気温が30℃くらいの時
天井裏の気温は60℃以上になります。
60℃から気温を下げることを考えると
電気代が高くなるのではと思われがちですが、
大広間全体の面積と天井裏の面積を比べると
天井裏の方が狭いため、冷却時間が短くて済みます。
急速冷房を行うと、20~30分で天井裏が涼しくなり、
通気用の隙間から天井下の大広間に向かって
滝のように冷気が下りてきて、
大広間の気温が一気に下がります。
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下りてくる冷気は風を伴うものでなく、
空気の循環によるものなので、
冷風を感じることはありません。
今で言えば、小屋裏エアコンという考え方です。
大広間にエアコンを何ヶ所か稼働させるよりも、
天井裏でエアコンを稼働させる方が効率が良く
省エネにもなるという、
自分で言うのもなんですが、大胆な発想でした。
夏に宝徳寺さんを訪れることがあれば、
本堂の心地よい涼しさを体感してくださいね。
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「床」を鏡面化するための試行錯誤
ご住職が思い描いた次の一手は、
庭の景色を映し出す「床もみじ」を
鏡に映ったかのように鮮やかに再現させることでした。
それまでも「床もみじ」は公開されていましたが、
鏡のようにクリアに映し出された印象はなく、
なんとなく庭の景色が映っているかな
くらいのぼんやりしたものでした。
本堂の床を鏡のように仕上げるために
専門の京都の漆(うるし)屋さんや
塗師(ぬし)に依頼すると
それなりの費用が必要になるため、
特殊な塗料や技術に詳しい職人がいないか、
探していたそうです。
それを耳にした設備屋さんが、
桐生市の山手にある温泉旅館の施工時に
様々な工法や工程を工夫した私のことを思い出され、
話を持って来られました。
そこで、私の考える塗料や工程を提案し、
鏡のような「床もみじ」を再現させるための
挑戦をさせていただくことになりました。
「床もみじ」を再現するために、
どこまで鏡面化できるかが最大の課題でした。
ゆがんだ床もみじにならないよう、
細かい葉っぱの表情まで上手く映り込ませるためには、
ある程度の厚みと透明感のある塗膜を作ることで、
再現できるのではと考えました。
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塗膜が厚すぎると乱反射を起こしてしまうため、
ウレタン塗料の中から適切な組成のものを選別し、
塗膜の厚みや塗膜層の重なりなどを
シュミレーションしました。
まず、磁器の皿にウレタン塗料を何層も吹き付けて
光の反射状態を試してから、
次に、現状の材質と同じ床材(1m×1m)に
カシュー塗料を塗った状態でウレタン塗料を塗り重ね、
反射角度や最終的な仕上がり感を確認しました。
磁器のお皿を使ったのは透明感を工夫するためで
何十枚も使って試行錯誤した後、
再現性を高めるために実際の木材で試作を重ねました。
宝徳寺さんの「床もみじ」の完成
宝徳寺さんの本殿の床にもともと塗られていたのは、
カシューという漆(うるし)の組成に近い塗料でした。
この上に塗料を塗り重ねていき、
最終的に鏡面仕上げにするには、
いくつかの工程を経る特殊な技法が必要でした。
1層目は、カシューに近い組成で定着性の高いものを塗り、
生乾きのうちに定着性の良い別素材の塗料、
2液型ウレタンクリア塗料を上へ上へと
塗り重ね、定着層として安定させていきました。
床の表面を滑らかに仕上げるためには、
車の塗装のように均一に吹き付ける必要があり、
特殊な機械を持ち込み、塗装を重ねていきました。
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冬場の施工だったため、
低温下での塗料の配合などをテストしながら、
慎重に工程を進めました。
1~2回の塗装では凹凸感が消えないため、
吹き付けるスプレーの霧の状態を
大粒から中粒、小粒、さらに細粒へと変化させ
合わせて7~8回に分けて塗料を吹き付けました。
塗料が完全に乾ききったら、
特殊な工法で磨き上げますが、
乾燥までに2ヶ月ほどかかりました。
定着層の厚い多層構造になっているためと、
気温が低いため、塗料が硬化するまで、
時間を要することになりました。
施工に1ヶ月、乾燥に2ヶ月ほどかかりましたが、
その間は、小さな埃(ほこり)もシャットアウトするため、
クリーンルームに入るような完全防備体制で臨みました。
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ようやく塗料の乾燥が完了し、鏡面仕上げを施すと
庭の景色がクリアに映り込む「床」が完成しました。
「床もみじ」は春の新緑の頃と秋の紅葉の頃に
それぞれ1ヶ月ほど限定で特別公開されています。
この秋には、是非、
宝徳寺さんの「床もみじ」をご覧になり
庭と床の両方の紅葉を楽しんでくださいね。
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「ふくろうはうすの住まいるライフ」(FM桐生毎週水曜日12:40分~)はこちら
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群馬県桐生市の工務店
リフォーム・リノベーション専門店
住まいの健康寿命診断士
ふくろうはうす(高橋建装)の高橋でした。
次回は「浄運寺さん(群馬県桐生市)本堂のあく洗いで柱などの木部を再生&
観音堂の須弥壇の漆黒塗り」のテーマで準備しています。
楽しみにしてくださると嬉しいです。