老舗温泉旅館のリニューアルのお手伝い~濁り湯の染み込んだ大浴場と別館の露天風呂


秋には、真っ赤に色づくもみじの葉っぱですが、
春は、新緑の青もみじが鮮やかに映えます。



コラムで以前お話させていただいた宝徳寺さんでは、
春の床もみじ」「秋の床もみじ」を
公開されていますので、
お出かけの際にご覧になってくださいね。


今回は「もみじ」つながりで、
温泉旅館のリニューアルを
お手伝いさせていただいた時のお話を
させていただきたいと思います。



老舗の温泉旅館古いお社(やしろ)
10年ほど前に再建させていただきました。



その時の様子をブログでお話していますので、
よろしければ、お読みくださいね。


今回は、その続きをお話させていただきます。




老舗温泉旅館のリニューアルをお手伝い


歴史が古く、
千年以上前から温泉が湧いているこの旅館は、
木々の緑に囲まれた山の中にある静かな一軒宿です。



江戸時代後期に建てられた温泉神社の、
薬師堂がほとんど潰れかけていたため、
その再建のご依頼をいただき、
古いお社(やしろ)を再建させていただきました。



湯治(とうじ)のために訪れる人も多く、
首都圏から近いため、昭和30年代には、
かなり賑わっていたそうです。



その後、少しずつ客足が遠のいていったそうで、
私が、温泉神社の再建のために訪れた時は、
残念ながら寂(さび)れた感じを否定できない
という状況でした。



そこで、まず、
温泉旅館を昔から守って下さっている薬師様を
お祀(まつ)りしている神社を整え、
その後、旅館リニューアルを行うという
計画が進められていました。



私とほぼ同世代の専務さんが中心になり、
賑わって華やいでいたころのように
旅館再生させようという決意のもと、
私にもお声がけいただきました。




大浴場を洞窟風にリニューアル


この温泉は、もともと冷鉱泉(れいこうせん)
湯の温度が25℃未満のため、加温して適温にしますが、
加温すると、茶色く濁った濁り湯になり、
この濁り湯の成分が非常に体に良いと
されています。


この濁り湯は本館大浴場で楽しめます。



大浴場の入り口を入ると、正面にがあり、
昼間は緑の木々を眺めながら、
浴槽に浸かることができます。



また、正面の窓の手前に、
湯口(ゆぐち:温泉の湧き出る口)があり、
天然石から温泉が湧き出すような演出がされています。



ところが、この温泉の成分は石化する特徴があり、
軽石のようになって、浴槽の側面や底面、
湯が流れていく洗い場の床などに
層状堆積されていきます。


放っておくと1年に3cmほど堆積されます。



浴槽の素材はこの周辺が産地ということもあり、
御影(みかげ)石が使われていますが、
温泉の成分が石化して堆積していて、
岩風呂のようにゴツゴツしていました。



20~30年ほど、不揃いに成分が固まり
堆積され続けた結果、
平均して厚みが20~30cmになっていました。



温泉の成分が固まったものなので、
身体に悪いということはないのですが
見た目があまりよくないということで、
様々な業者に堆積物剥離を依頼したそうですが、
上手くいかなかったそうです。



その後、私にお声がけいただきましたので、
鉱物特性と照らし合わせながら、
成分を調べてみると、
石化したところは炭酸カルシウムでした。



そして、ある角度から一定の力を加えてみると
剥離することがわかりました。



浴槽を傷つけないよう、手加減しながら試してみると、
ポロポロと剥がれたため、
鉄鋼屋さんにちょうどよい角度をつけて
作ってもらったヘラを使って、
浴槽の側面、底面、洗い場の床
はつっていきました。



削岩機(さくがんき)は使えないため、
手作業で進めましたが、
職人5人がかりで1週間を要しました。



削岩機(さくがんき)は、岩石に穴をあけたり、
割ったりする建設機械です。



きれいにとり除くことは無理なので、
多少堆積物が表面に残った感じですが、
ほぼ、元通りになりました。



施工後の大浴場は、こんなに広かったのか、
と思えるほどスッキリと仕上がりました。


その後、大浴場のも塗り替えました。



もともとは白っぽい色が塗られていましたが、
リニューアルするにあたり、
洞窟のようなイメージにして、
落ち着いた雰囲気を出すことになり、
薄茶色を塗って、少し薄暗い感じに仕上げました。



その分、照明を少し明るくして、
明るすぎず、暗すぎず、ちょうどよい照度
調整しました。



大浴場の浴槽や床のはつりと
壁の塗装が終了して、一旦引き上げました。




老舗温泉旅館別館の高級感を生かすための庭と露天風呂


その後、しばらくしてから、また、
専務さんよりお声がけいただきました。


次に手を入れる予定の別館についてのご相談でした。



部屋がそれぞれ高級料亭のような造りで、
隣の部屋の存在を全く感じさせない
完全個室になっている別館があります。



築30年くらいで、本館よりも、
高級感を醸し出し、一線を画(かく)すような
静かな佇まいという印象でした。



残念ながら、この別館も本館と同じで、
お客様が来られて賑わっているという様子は
ありませんでした。



各部屋は高級感あふれる雰囲気でしたが、
部屋から見える景色が残念でした。



旅館の敷地内に、大きな沢が流れていて、
その沢筋に立派なモミジが茂っていました。



春には新緑、秋には紅葉が楽しめる自然の庭で、
見事な景色が味わえるはずですが、
残念なことに雑草が伸び放題で、
部屋からの借景を台無しにしていました。



そこで、専務さん自らチェーンソーを持ち出し
毎日のように草刈りをされていました。



刈ったところに、また、雑草が生えてこないように
砕石を買ってきて敷き詰められていました。



部屋から見える景色が整えば、
春の新緑と秋の紅葉はもちろん、
夏場は沢の音が耳に、涼風が肌に心地よく、
冬場は沢筋が凍って雪も降るため雪景色を楽しめます。



もともと四季折々の景色が楽しめるように、
作り込まれた別館でした。



また、それぞれの部屋には、山の清水を引き入れた
水質のよい源泉の内風呂がありましたが、
全体の部屋の広さに対して、
内風呂が手狭な感じでした。



ゆっくり滞在を楽しむという点では、
この内風呂では満足感が足りない感じで、
部屋の雰囲気が良いのに
もったいないと思われました。



内風呂を広げることはできないため、
各部屋に露天風呂を造ったらどうかということで、
露天風呂付きの客室を造ることになりました。



露天風呂をどのように造ったのか、
そして、本館にはどのような手を入れたのか
については、次回お話しますね。



ちなみに、この老舗温泉旅館は、
桐生市の山間部にある梨木館さんです。


読者さんの中で宿泊された方はいるでしょうか?
とても素敵な宿ですので、旅行に来られる際には、
是非、宿泊してみてください。



そして、記事のお話を思い出していただけたら
また違った角度から楽しむことが出来るかと思います。


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群馬県桐生市の工務店
リフォーム・リノベーション専門店
住まいの健康寿命診断士
ふくろうはうす(高橋建装)の高橋でした。



次回は「照明の色彩の変化を楽しむ本館の半露天風呂~
老舗温泉旅館のリニューアルのお手伝い」のテーマで準備しています。
楽しみにしてくださると嬉しいです。

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