照明の色彩の変化を楽しむ本館の半露天風呂~老舗温泉旅館のリニューアルのお手伝い


前回、老舗温泉旅館「梨木館(なしぎかん)」さんの
リニューアルのお手伝いをさせていただいた時の
お話をさせていただきました。



既に10年以上前の話になりますので、
私が施工させていただいた後も、
様々な変化を遂げられていることと思います。


少し昔の思い出話として、お付き合いください。



前回は、別館から眺めることのできる
見事な風景を楽しむため露天風呂を造る
というところまでお話させていただきましたが、
今日は、その続きをお話させていただきます。




自然と一体化できる別館「はせを亭」の露天風呂


見渡す限り森の広がる山の中の一軒宿で、
お客様に心ゆくまで自然を満喫していただくため、
露天風呂を設けました。



別館は屋根の軒が長く、
部屋には大きな掃き出し窓があるため、
掃き出し窓からデッキを延長して露天風呂を造れば、
増築する手間も暇もかかりませんでした。



隣の部屋との間仕切りは、
雰囲気を損なわないよう木の板を使って
衝立(ついたて)風に造りました。



別館は各部屋すべてが、大きな掃き出し窓から、
沢谷モミジが見えるオープンな造りでした。



まずは、別館の最も奥に位置する最高級の部屋に
最初の露天風呂を造りました。



山の清水を引いた水質のよい源泉
別館専用のボイラーを使って
沸かしていましたので、そのまま
露天風呂にも供給しました。



別館の一番奥の露天風呂が完成して、
新聞社の広告で宣伝を行ったところ、
ご覧になった人たちから、
こんなに雰囲気のよい隠れ宿があったのか、
と注目され始めました。



芸能人や著名人が、自然の中に身を置くため、
または、大企業の社長が家族を連れてひっそりと
来訪されるようになりました。



その後、別館にある他の部屋も、
自然に溶け込んだ雰囲気をそのまま生かすために、
敢えて、露天風呂に川石を使うなど、
部屋ごとに少しずつ風情の違いが出せるよう
提案や工夫をしました。



別館には手前に2階建ての建物があり、
1階、2階とも小さめの部屋が3部屋ずつ、
合計6部屋ありましたが、


家族で長期滞在を楽しめるように、
3部屋をぶち抜き1部屋に造り替え、
広々と使えるようにしました。



1階と2階にそれぞれ1部屋ずつの
ゆとりのある広い部屋が出来上がりました。



建物の両側に庭があり、表の庭にはがあって、
値打ちものの錦鯉が悠々と泳いでいました。



また、裏庭はそれまで使われていませんでしたが、
裏庭を眺めながらお風呂に浸かる露天風呂を造り、
1階の部屋のメインとしました。



2階の部屋は、少し趣を変えて、
カラオケルームシアタールームを作り、
ビールサーバーを置いて、
ゆっくり滞在して楽しめる仕掛けを作りました。



心置きなく、映画を楽しみ、カラオケができるよう、
防音壁を作って完全に仕切り、防音室にしましたが、
のちのち間仕切りを撤去できるような工夫をしました。



こうして、梨木館「はせを亭」の6部屋の
リニューアルが完成しました。




景色を眺める掘りごたつと選べる桐生織浴衣


梨木館「はせを亭」のリニューアル完成後に、
本館リニューアルに取り掛かりました。



昔は団体客で賑わっていたそうで、
小さめの部屋がたくさんありましたが、
今後は個人のお客様向けにシフトして
リニューアルするという計画でした。



そこで、2部屋をぶち抜いて1部屋にするため、
旅館全体の強度計算を行い、施工方法を考えました。



温泉旅館でよく見かけるのが、
窓際にテーブルとソファのセットがあり、
そこから外の景色を眺められるというものです。



そこで、外の景色を眺められるように
窓際にテーブルとソファではなく、
掘りごたつを置き、半露天風呂も設置し、
くつろぎながら、お風呂に入りながら、
自然満喫できるようにしました。



本館は3階建てでしたので、
2階と3階のそれぞれの角部屋
半露天風呂付き客室として、
露天風呂を設置しました。



また、床から段差をつけて
高い位置から景色を眺められるように
小さめの掘りごたつを設置しました。



他には、押入れを改造して、
ガラスのショーケースにして、ガラス扉をつけ、
畳んだ浴衣を数枚、ガラスの棚にのせ、
中から照明を当てて、浴衣ケースを作りました。



桐生織の最上級の浴衣を何枚かディスプレイし、
お客様に、お好きな浴衣を
選んでいただけるようにしました。






照明の色を自由に変化させられる本館の半露天風呂


半露天風呂つきの客室は、
ただ半露天風呂に入るだけでなく、
何か特別演出はできないかということで
知恵を絞りました。



そして、それぞれの部屋によって、
露天風呂の大きさや素材は違いますが、
浴槽に埋め込んだ電球を使って、
お風呂の照明の色が変わる演出を行いました。



お風呂の浴槽電球を埋め込むための
ガラスの容器に3原色(赤、黄、青)の
電球を入れました。



当時は、まだ、LED電球がなかったころで、
光をどのように合成しようかと
いろいろ考えましたが、最終的には、
色電球を使って手作りしました。



電球用のスイッチを設置し、
部屋で操作できるリモコンも作って、
手元で露天風呂の照明の色を
自由に変化させることができるようにしました。



子どもの頃からの好奇心を思い出しながら、
浴衣用のガラスのショーケースや
露天風呂の照明やリモコンを
造らせていただきました。



半露天風呂付き客室を1部屋完成させるたび、
「宿泊第1号として、お客様の立場で
3日間宿泊してください」と言われました。


自分で作った照明やリモコンを実際に試しました。



リモコンが不具合を起こしてはいけないので、
何十回も何パターンもテストしました。



また、部屋の出来栄え雰囲気
コンセプト通りになっているのか、
五感で感じてみましたが、
狙い通りのものが出来たと自負しました。



梨木館(なしぎかん)さんの老舗温泉旅館の
リニューアルの話はここまでです。



日常生活の喧騒(けんそう)に疲れたら、
山に囲まれた梨木館(なしぎかん)さんを訪れ、
自然の癒しに包まれてみませんか?


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住まいの健康寿命診断士
ふくろうはうす(高橋建装)の高橋でした。



次回は「両親から息子さん夫婦へ引き継がれるお住まいへの想い&
『健康長寿リノベーション』と急病後の療養生活」のテーマで準備しています。
楽しみにしてくださると嬉しいです。

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