お客様からのお問い合わせで、
「自己修復するコンクリートがあると
聞いたのですが、どんなものですか?」
というご質問をいただきました。
「自己修復するコンクリート」は、現在、
土木関連の大型建造物に使われ、
住宅には使われていませんが、
私も以前から関心があり、
建築学会主催の講演会で、
コンクリートの今後の活用法などを
聴いたことがあります。
今回は、そんな自己修復するコンクリート
についてお話させていただきます。
鉄筋コンクリートの特徴と中性化
鉄筋コンクリートで造られている大型構造物は、
太い鉄筋が十文字に網の目のように組まれ、
周囲の型枠にコンクリートを流し込んで、
固められています。
鉄筋は空気中の水分による錆びに弱いという
特徴がありますが、
周囲を強アルカリ性のコンクリートに囲まれ、
腐食しないよう保護されているため、
鉄筋コンクリートは非常に頑丈です。
コンクリートは圧縮には強いけど、
湿度や気温の変化によって伸び縮みして、
ひび割れが発生することがあります。
一方、鉄筋は圧縮には弱いけど、
伸縮性が高いという特徴を持っています。
それぞれ反対の特徴を持った素材が、
絶妙なバランスを保っていることで、
鉄筋コンクリートは、
靭性(じんせい:粘りや弾力性)が
非常に高いです。
コンクリートの主成分は消石灰で、
強いアルカリ性であり、
空気中の二酸化炭素によって中和されます。
中性化することで、コンクリートの強度が
低下することはありませんが、
中和が進んで、内部の鉄筋まで到達すると
鉄筋が錆びてしまいます。
すると、鉄筋コンクリートは、
靭性(じんせい)が脆くなり、
圧縮や伸長の力に対して、非常に弱くなります。
そこで、鉄筋を腐食から守るため、
コンクリートに厚みを持たせます。
鉄筋からコンクリートの表面までの厚さを
「かぶり厚さ」と言い、建築基準法によって、
適正な厚さが決められています。
コンクリートの中性化のスピードは、
年間0.5mmほどと言われていて、
厚さ30cmの鉄筋コンクリートの場合、
30年後には、鉄筋まで浸透する計算に
なります。
土木構造物の橋や道路などは、
かなり分厚く造られますが、
特に、瀬戸大橋など海の中の構造物の
鉄筋コンクリートは、非常に分厚く
造られています。
海の塩分によって、
中性化の進行が早くなることもあり、
いかにコンクリートを保護するのか、
昔からの課題のひとつでもあります。
鉄筋コンクリートの中性化を防ぐための塗料
鉄筋コンクリートの中性化を防ぐため、
様々な塗料の研究がされてきました。
例えば、コンクリートの中性化を
遅らせる薬剤があり、塗布することによって、
コンクリートの奥深くまで浸透させます。
40年ほど前から使われるようになった
塗料ですが、1回塗っただけで効果が続く
というものではありません。
1年おきに塗り重ねていくと、
中性化が1.5倍延長できるため、
例えば、「がぶり厚さ」30cmの鉄筋コンクリートの場合、
45年くらい持たせることができますが、
いずれは寿命を迎えます。
塗装を施したとしても、中性化の進度は
均一とは限らないので、
中性化が激しいところもあれば、
緩やかなところもあります。
そこで、鉄筋探査装置などを使って、
中性化の状態を推測し、必要な箇所には、
コンクリートの打ち替えをするなど、
部分改修を行い、寿命を延ばすための
絶え間ない努力が続けられています。
ひび割れを自ら埋める「自己修復性コンクリート」
鉄筋コンクリートの課題のもうひとつは、
ひび割れです。
厚いコンクリートでも、ひび割れると、
コンクリートの中性化が進み、
鉄筋に到達する進行度が早くなります。
また、鉄筋に到達しないまでも、
空気中の二酸化炭素が雨水によって、
クラックの中に浸透されます。
そのため、クラックから入る二酸化炭素の量は、
鉄筋コンクリートの表面積に
接触している量より多くなり、
それが、寿命を短くさせる一番の要因になります。
だからこそ、
細かいひび割れを自己修復することが、
鉄筋コンクリート構造物の健康寿命を
延ばすことにもなります。
クラックを埋めるために、例えば、
アルカリ強度を長時間保つための薬品で
コーディングする方法がありますが、
土木構造物だと面積が広いため、
人の手でひとつひとつ修復していくには
膨大な手間と時間がかかります。
そこで、薬剤に代わるものとして
「自己修復性コンクリート」
の研究が行われました。
その結果、
コンクリートにバクテリアを添加することで、
バクテリアがコンクリートの石灰化を修復する、
つまり、クラックの穴塞ぎをするという方法が
導き出されました。
バクテリアが、空気中のカビなどを食べて代謝し、
人で例えると汗のようなものが、
コンクリートのひびを塞いて、
再石灰化を促す働きをするというもので、
生コンの状態で、バクテリアを添加して、
コンクリートと共生させます。
すると、バクテリアの代謝物が
コンクリートのひびをどんどん埋めていって、
ピタッとくっつける「自己修復性コンクリート」
になるわけです。
まだ、住宅には使われておらず、
主に公共性のある土木構造物に使われていて、
実験段階でもあります。
最近は、現場での作業効率をよくするために、
工場である程度成形したものを現場に運び、
少ない工程で組み立てることが主流になっています。
すると、現場で打ち込むコンクリートよりも、
接合部分が多く、クラックが入りやすくなります。
そこで、工場であらかじめ製造される
プレキャストコンクリートにも、
自己修復するコンクリートを応用しようと
しています。
大幅なメンテナンスコストの削減のために
どうすればよいのか、
という様々な研究の中から出てきたひとつの成果が
「自己修復性コンクリート」です。
今後、どのように発展していくのか、
見守っていきたいと思っています。
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群馬県桐生市の工務店
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ふくろうはうす(高橋建装)の高橋でした。
次回は「【新築】自然と調和し、日々の暮らしを楽しむための
『大人の隠れ家』の完成」のテーマで準備しています。
楽しみにしてくださると嬉しいです。