木材の使用用途として、
木造住宅の骨組みとなる柱や梁(はり)、
床のフローリングや壁材などがあります。
テレワークが普及して、家で過ごす時間が増えたことにより、
室内環境の意識が高まり、自然素材を選ばれる人が増え、
木材や漆喰(しっくい)が見直されています。
そこで、今回は、お家の建材として使われる木材の
今昔をテーマにお届けします。
こんにちは。
リフォーム・リノベーション専門店
住まいの健康寿命診断士
ふくろうはうす(高橋建装)の高橋です。
いきなりですが、木の香りは落ち着きますよね。
新築の木造住宅や木材をふんだんに使ったリノベーションの後は、
お住まいに入ると、自然の木の香りに包まれて癒されます。
昔ながらの伝統工法の木造住宅は、まず森を育て、
ゆっくりと成長した木を伐(き)り出して、
時間をかけて製材してから、住まいとして長く生かせるよう、
様々に工夫されて建てられてきました。
木造建築は日本の風土によく合っていますが、
そんな日本古来の木造住宅に使われる木のお話を
させていただきますね。
木は切ってからも生き続ける
木は水や養分を吸い上げては細胞を増やして成長します。
そのため、水や養分を吸い上げるための
無数の細かい穴があり、柱になってからも、
空気や水分の吸収と放出を繰り返しています。
杉で例えれば、柱1本で一升瓶2本分くらいの水分を
吸放出しています。
木材となってからは根っこがないのですが、
人間に置きかえれば、皮膚呼吸をしている状態です。
木造住宅は、柱などの木材が湿気の調整をする働きがあり、
湿気が多いと水分を含み、空気が乾燥すると放出する
自然の調湿効果があります。
また、木は真ん中に水や養分を貯え、幹を太くしていきますが、
弾力性を保つために気泡の中に脂分を貯め込んでいきます。
脂分をなるべく長く閉じ込めようとする作用は
伐採され、製材されてからも続きます。
そのため、木は切られてからも生き続けると言われています。
その年数は、木が成長して伐採されるまでの期間の約3倍と
言われていますので、70年杉を例にすると
約200年の脂分を蓄えていることになります。
在来工法で建てられた築100年を越えた家を
解体したことがありますが、
柱の断面を見ると中心部が乾燥してもろくなっていて、
家の骨組みとしての役目は、終わりを迎えていました。
昔から伝わる木材の自然乾燥は半年ほどかかる
家のメインになる柱などは樹齢70年以上の杉を使い、
荷重の負担の少ない場所の柱などは
少し若い樹齢40年の杉材を使うこともあります。
解体した時に両者の断面を比較すると
樹齢70年杉より40年杉の方がやはり脂の抜けは早く、
脂の乗り切った良い材を使うと
脂を閉じ込められる期間が長いことを実感しました。
樹齢の違いで、部材が適材適所に使われているなど、
解体の機会に昔の職人さんの仕事に触れることができます。
丈夫で長持ちする家を建てるためには、
粘り気のある活きのよい木材も必要となります。
そのために、昔は時間をかけて木を伐採してから、
自然乾燥をさせていました。
脂分を十分に溜め込んだ木を切り倒してから、
山の斜面に寝かせたまま、雨ざらし状態で放置します。
これが1次乾燥で、葉枯らし乾燥といいます。
杉や檜は、自ら身を守るために、切り倒されると、
幹の水分をなるべく逃がさないよう、
葉っぱの水分を逃がすという作用が働きます。
同時に木の中に脂を蓄えるという作用も働くため、
水分は抜けて適度な脂分は閉じ込められた状態になります。
葉が枝から離れてはらはらと落ちる頃合いになると
適度な水分が抜けた状態となり、1次乾燥を終えます。
それから、製材を行いますが、製材された木材は
寸法を安定させるために2次乾燥が必要なため、
積み上げて、再度自然乾燥させます。
1次乾燥に約3~4ヶ月以上、
製材してからの2次乾燥に約1~2ヶ月が必要となり、
1本の木材が家の部材として使われるまでに約半年ほどの
時間がかかってしまいます。
現在は時間短縮した強制乾燥材が主流
現在は、木材を大きな釜の中に入れて蒸気で蒸して
強制的に水分を排出する乾燥の方法があり、
その方法で作られた強制乾燥材という木材が、
これから主流になりつつあります。
時間を短縮することはできるのですが、課題は多く、
強制的に水分を抜くと脂分も同時に抜けてしまうことから、
強制乾燥材は粘りが少なくなってしまいます。
それはつまり、柱としての寿命も短いということになります。
立派に育った70年杉であっても、強制乾燥させると
昔の40年杉以下の寿命になってしまうことになり、
せっかくの杉の持ち味を生かすことができません。
この課題を解決するため、強制乾燥をしても、
脂分が抜けないような工夫ができるようなシステムを
新たに構築するという話も出てきているようです。
自然乾燥のような手間や時間はかけられなくなっていますが、
住まいの健康寿命を延ばすためには、昔のような木材を
使えるようになることが、大切だと思っています。
群馬県高崎市周辺の西毛(せいもう)地域は、
群馬県の主な杉の産地で、県産材の供給地ということもあり、
杉の伐り出しから製材まで行う基盤が整っています。
山から伐り出した木を近くの製材所へ運び込み、
柱や梁などの構造材だけではなく、
床材、壁材など二次製品の加工ができるような流れができれば、
国産材をもっと上手く活用することができるのではと思います。
木材に関するこだわりのある方やお問い合わせがある方は、
「住まいの健康寿命診断士」の私、高橋まで、
お気軽にご相談ください。
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みどり市、太田市、伊勢崎市、前橋市にお住まいの方も
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次回は「杉や檜(ひのき)の木材としての特徴と柱の背割り」
のテーマで準備しています。
楽しみにしてくださると嬉しいです。