『刃物研ぎ』と『重機の操作』~幼少期から建築現場で自然に身につけた得意技~


先日、お客様から
刃物の研ぎ方を教えてほしい」
とご相談いただきました。



コラムを遡(さかのぼ)って読んで下さったそうで、
「ものづくりの原点は社長の幼少期からですね。
孫にも幼いうちからできることを経験させたい。」
とおっしゃいました。



お話を伺うと、お孫さんは植物に興味があり、
植木屋さんになりたいそうで、
植木ばさみの研ぎ方を教わりたい、との事でした。



興味を持ったものは、
失敗しても、とことんやった方がよい」
と、お客様と私の考えが同じでしたので、
お孫さんの力になればと、
引き受けさせていただきました。



思い返せば、5歳くらいには、
祖父から刃物の研ぎ方を教わり始めました。



今回は、建築現場で徐々に身につけ、得意になった、
刃物研ぎ」と「重機の操作」についてお話します。





大工の刃物研ぎ


私が子どものころ、
大工さんがまな板を削り、包丁を研ぐというのは、
よく見かける光景でした。



平成の半ばくらいまでは、
公民館で、地域の大工さんが
包丁研ぎまな板のお手入れのイベント
定期的に行っていました。



木のまな板は使ううちに少しずつ反ってきて、
包丁の刃が当たらなくなるため、
持ち込まれたまな板にカンナをかけて、
平らにしていきます。



また、包丁は、
の前後どちらかが偏って丸くなったりと、
使う人によってがついてきます。



刃先をみると右利き、左利き
の入れ方から、体格までわかります。



使い込まれているものほど、その人の特徴が出るのは、
ノミやカンナも同じです。



刃物を研ぎながら、の入れ加減や使い方など
大工さんのを憶えていきました。



私が子どものころ、刃物研ぎは、
「小僧っ子」と言われる年少者の仕事でした。



祖父から刃物研ぎを教わったのは
5歳くらいからですが、
初めは、彫刻刀のような小さなものを
砥石で研いだりしました。



小さな刃を研ぐのは難しく、
親指を切ることもありましたが、
「指を切らないように上手にするには
こうやって押さえるんだよ。」
手ほどきを受けました。



その後、少しずつ大きなものを扱うようになり、
刃物研ぎは得意分野になりました。



刃物全般の扱い方は共通しているため、
ノミやカンナの手入れを
はさみや包丁にも応用できます。





刃物研ぎは荒砥ぎ、中研ぎ、仕上げの3段階


小学1~2年くらいになり、刃物に慣れてくると、
自分の手のひらより少し大きくて重さもそれなりの
薪割り(まきわり)用のナタなどの
荒砥ぎ(あらとぎ)を教わりました。



丸くなった刃の部分を両手でしっかり持ち、
大きめの砥石(といし)に当て、
角度をつけながら力を入れ、鋭くさせていきます。


ナタの次にはノミの荒砥ぎ(あらとぎ)を行いました。



荒砥ぎ(あらとぎ)を終えると
中研ぎ、仕上げへと移行しますが、
まずは荒砥ぎ(あらとぎ)の経験を積みました。



荒砥ぎ(あらとぎ)で
ざっくりと刃先を出すのが小学生の低学年、
それから中、高学年になると中研ぎ(なかとぎ)を経て、
勘がつかめるようになると仕上げまで
任されるようになります。



そして、中学に上がるころには、
いろいろな刃物を研げるようになりました。



顔見知りのご近所さんに包丁研ぎのアルバイトを
させていただき、包丁4~5本研いで、
500円札1枚をいただいたこともありました。



こうして、稼いだおこづかいは、
ラジオの部品などに化けていき、
その後は、無線機を自作するための材料費へと
変わっていきました。





中、高校生の夏休みは現場で職方修行


昔は13~15歳、中学を卒業するころには、
一端(いっぱし)の職人、職方(しょくかた)に
なっていました。



私も中学生になると、
自分の技量の範囲内で、仕立ての中間段階までを
させていただいていました。



現場に送り出す前の材料の下準備として、
木材の長さを揃えて切ったり、
仕上がりの1~2歩手前くらいの厚みにするため、
木材のカンナ掛けを行ったりしました。



昔は、16歳になると、一人親方として
十分通用するくらいのレベルの技量をもった
職人、職方(しょくかた)が多かったように思います。



私が幼かったころは、
住み込みの職方(しょくかた)がいました。



住み込みの職方(しょくかた)と言っても、
14歳~20歳未満くらいの若い衆(わかいしゅ)で、
親方のもとで仕事を覚え、
独立を目指して修行していました。



私も中、高校生のころの夏休みは、
現場での実戦経験を積ませていただきました。



その頃には、一人親方になるための下準備
という意味合いが強くなり、
現場に対する責任感も芽生えてきました。



高校1~2年生になると、現場の仕上げに関わったり、
仕事の一部を任されることも多くなりました。



昔ながらの「職人を育てる」という環境で育ったため、
現場で経験を養わせていただくための
実践教育を受けることができました。





重機の操作と阪神淡路大震災でのボランティア


中学生の時には、ユンボ(掘削用建設機械)の操作を憶え、
基礎工事の際に操作させていただきました。



これらの重機は、小さいものの方が、
扱い方が難しいとされています。



大きいものはアクションがゆったりしているため、
レバー操作もゆっくりですが、
小さなものだと小刻みなアクションが必要です。



特に狭い場所の作業では、
微妙手加減足加減が難しく、
使いこなすために3~4年はかかります。



重機は大型機械ですが、
手作業の延長線にある道具と言えるもので、
大がかりな施工を行うために
自分の手足の代わりに大型機械を使って
作業を進めるというものです。



中学生のころは機械の操作に慣れるため、
現場近くの安全な場所で練習しました。



免許の取得ができる16歳から挑戦して、
20歳までに、特殊重機を扱うことのできる
様々な種類の免許のほとんどを取得し、
操作の方法を覚えました。



今から30年ほど前の1995年に発生した
阪神淡路大震災時には、
重機のオペレーターが不足していると聞いて
応援にかけつけました。



当時、広島県在住の人とご縁があったのですが、
「たいへんなので来てくれませんか?」
と、ご連絡いただき、
ボランティアとして神戸入りしました。



まずは、倒壊した建物の瓦礫(がれき)
クレーンで吊り上げ、どかしていきますが、
そのまま持ち上げると危険が伴います。



周囲とのバランスを取りながら、
専門家のヘルプのもとで、
慎重に作業する必要がありました。



瓦礫(がれき)の中に人がいるからと
撤去作業を依頼されたこともあり、
残念ながら、お亡くなりになられていた方も
いらっしゃいました。



重機のオペレーターという立場でしたが、
阪神淡路大震災を自分の目で見て肌で感じた
大きな体験となりました。



子どものころから自然に身につけたもののひとつ、
重機の操作が、少しは役に立ったかもしれませんが、
大きな地震に見舞われることなく、
平和な日常が続くとよいですね。



また、冒頭にお話させていただいた、
お客様のお孫さんへの刃物研ぎの手ほどきですが、
幼稚園の年長さんということもあり、
まずは鉛筆の削り方から始めました。



小刀を使って鉛筆を削りますが、
切れない小刀を使うと余計な力が入り、
まで切ってしまう危険性があります。



小刀を研ぎ、切れ味を整えると
楽に鉛筆を削ることができます。



簡単に研ぐことのできる人工砥石を使って、
力を入れなくても軽く研ぐだけで、
えんぴつが削りやすくなるという
体験をしていただきました。


手先のことは地道なことが基本になります。



出入りの植木屋さんが器用にはさみを使う姿や、
庭木が動物の形に刈り込まれることに
お孫さんは興味を持たれているそうです。



刃物の扱いについて、更に知りたくなった時には、
また、力になれればと思っています。

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群馬県桐生市の工務店
リフォーム・リノベーション専門店
住まいの健康寿命診断士
ふくろうはうす(高橋建装)の高橋でした。


次回は「囲炉裏や火鉢が中心だったころの冬の寒さの凌ぎ方と食の楽しみ
~古民家に思いを巡らす~」のテーマで準備しています。


楽しみにしてくださると嬉しいです。

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