道具というのは、不思議な存在です。
ただの物ではなく、
使い手の姿をそのまま映し出す
鏡のような一面があります。
きちんと使えるようになって、
はじめて一人前になれることを
以前にもお話させていただきました。
現場で切磋琢磨している職人さんは、
少なくはないでしょう。
道具の使い方と「手加減」
道具は、道具屋さんが一つひとつ
丁寧に作り上げてくれたものですから、
決して安くはありません。
私も、若い頃は、給料の半分をつぎ込んでも
ノミ一つ買えない、そんな時代もありました。
また、良い道具を手に入れたからといって、
すぐに良い仕事ができるわけではありません。

大切なのは、使い込みながら、
自分の適性を知っていくこと、
その積み重ねこそが、職人にとって
一番重要なことなのだと思います。
「手加減」という言葉があります。
力の入れ方、道具の当て方、
材料との向き合い方などを
身につけないと道具に負けてしまう
とも言えます。
多少の失敗をしたり、
怪我をしたりすることがあったとしても、
正面からきちんと向き合い続けていけば、
道具は少しずつ自分のものになっていきます。
正直に、誠実に向き合えば、
それなりの答えを返してくれる、
それが道具なのだと思います。
素直になることが上達への近道
ノミの刃先を見れば、
その人の使い方がわかります。

少し斜めに減っていたり、
端のほうがへこんできたりと
使い方の癖が出てきます。
使い始めて1~2か月もすれば、
そうした兆候が現れます。
力の入れ方や、右利きか左利きか
によっても違ってきます。
そこから、
「材料に対して丁寧さが足りなかったな」
と気づき、少しずつ修正していく。
素直になることが、上達への近道でした。
最初は、ひたすら練習の日々です。
要らなくなった木片で
練習することもありますが、
基本は実践で身につけていきます。
昔は親方について、「たたきノミ」と呼ばれる、
道具を使って、仕上げではない部分で、
「ほぞ穴」という四角い穴を刻む作業を
任されていました。

ノミをたたくだけで、スポッと入るため、
場を積む経験ができるわけです。
そして、少しずつ自分の手ノミを使い、
大小さまざまな大きさの組み合わせを
駆使して、刻むようになっていきました。
表には出ない、見えない部分での実践と、
陰ながらの練習、その積み重ねが、
いつの間にか腕になっていきます。
道具に魂を込める
道具に魂を込める、
という言い方がありますが、
そもそも材料は生きていた木です。
「使う」のではなく、「いじらせていただく」
そんな気持ちで向き合ってきた覚えがあります。
木は乾燥具合や成分の違いによって、
加工の仕方も変わります。
樫のような硬い広葉樹もあれば、
杉のように柔らかい木もあります。
その違いを感じ取り、
手加減をコントロールできるようになることが
大切です。
ところが、今は生の実践現場が
ずいぶん少なくなりました。
現場では組み立てるだけ、という仕事が増え、
新築はできてもリフォームは難しい、
という大工さんもいらっしゃいます。
けれど、リフォームこそ、
手加減やさじ加減がものを言う仕事です。
左官の世界も同じです。
昔の土壁や漆喰塗りでは、
既存の材料に合わせて成分を変えたり、
試し塗りを重ねたりしながら
仕上げていました。
今では、そうした姿を見る機会は減り、
京都の寺社仏閣を手がけるような職人さんたちが、
かろうじて受け継いでいるのが
現状かもしれません。
例えば、
プレミックス材(あらかじめ混ぜ合わせた材料)を
そのまま使ったり、組み立てたりという作業を
本当の意味での仕事と言って良いのか、
疑問を感じるところです。
昔の知恵が詰まった「左官辞典」
面白いバイブルがあります。
昔の知恵が詰まった一冊「左官辞典」です。

ヤブ原商店出版部という
左官材料メーカーが出版し、
重版もされたものですが、
今は廃刊になっています。
その二版目を、祖父から譲り受けました。
ひもといてみると、
今では再現しづらい昔の壁の材料や工法が、
丁寧に記されています。

この辞典は左官のためだけの本ではありません。
大工との連携を前提に書かれており、
木の性質についても詳しく触れられています。
例えば、竹小舞(たけこまい)や通し貫(ぬき)など、
昔は、柱と柱を通す通し貫(ぬき)を左官が担当し、
壁を塗ったあとに隙間が出ないよう、
あらかじめ調整していました。
遊びを見ながら下地をつくるためです。
今思えば、本当にレベルの高い仕事が
当たり前のように行われていたのだと感じます。
「左官辞典」は、
単なる技術書ではありません。
道具と向き合い、材料と対話し、
現場で学び続けてきた職人たちの姿勢
そのものが詰まった一冊です。
実は「左官辞典」だけでなく、
「左官工学」「左官実用百科宝典」
も持っています。

いずれも「左官辞典」と同じ出版社から
発行されたもので、初版は昭和16年。
ずいぶん古くなったため、
あちこち、黄色くなってきましたが、
昔ながらのお家に出会うたびに
施工の仕方などを調べています。
道具を通して自分を知る、
その大切さを、今、改めて
教えてくれているように思います。
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群馬県桐生市の工務店
リフォーム・リノベーション専門店
住まいの健康寿命診断士
ふくろうはうす(高橋建装)の高橋でした。
次回は「2026年も国の補助金あり!リフォームで健康快適生活!
3つの補助金を活用する!」のテーマで準備しています。
楽しみにしてくださると嬉しいです。




