家の寿命を延ばす「住まいの健康寿命診断」と「五つ道具」

塔組(とうぐみ)は、木組み。木組みは、木のくせ組。
木のくせ組は、人組(ひとぐみ)。人組は、人の心組み(こころぐみ)。」

という宮大工の口伝があるのですが、
この言葉からいつも色々考えさせられ、気づきを得ています。
先人の教えは改めて大切にしたいと思う、今日この頃です。

 

こんにちは。
リフォーム・リノベーション専門店
ふくろうはうすの高橋です。

 

前回のコラムでは、
リフォーム・リノベーションの施工をする時には
住まいのお悩みが解消されることが重要
最適なリフォーム・リノベーションを行うためには
現状を適切に調査・診断することが大切だというお話をしました。

 

お悩みのひとつひとつに、さまざまな要因があるので、
まず、お客様に詳しく丁寧にお話を伺うことで、
考えられる要因を絞り込むことができます。

 

このように細やかにお客様からヒヤリングを行い、
現状を把握した上で、実際に現場を調査し、
得られたすべての情報や気づきを元に住まいの健康寿命診断を行い、
原因とその経緯を見極めます

 

さらに必要に応じて、さまざまな測定機器を使って、
より詳しく観察したり、データを分析したりして、
科学的に原因を特定します。

住まいの健康寿命診断」の調査の進め方

住まいの健康寿命診断」を行う際には、
まず、日差しや風雨などの影響を受けて一番劣化が進みやすい
屋根や外壁などの外回りから調査を始めます

屋根 → 外壁 → 床下(基礎)という順番です。

 

次に、室内は、
天井裏の小屋組(こやぐみ)→ 壁 → フローリング
の順番に調査を進めていきます。

小屋組(こやぐみ)とは、屋根を支えるための骨組みとなる
屋根構造のことです。

 

上記のように高い場所から低い場所へと順に進めていき、
水平面については、
日光がよく当たり劣化が進みやすい東と南から順番に
東 → 南 → 西 → 北 と右回りに
ぐるりと一周しながら調査を進めます。

基礎の場合は、日の当たらない北の劣化が進みやすいため
北から調査を始めます

 

このように家の外から中まで全体を調査し診ていきますが、
築年数やご相談いただいたお客様のお悩み内容に応じて、
室内だけを診ることや、外回りや骨組みだけを診ることもあります。

 

表面的変化や不具合は、目視でほぼ判断できますが、
さまざまな測定機器を使って詳細な確認をすることで、
より科学的かつ正確な診断をすることができます。

 

住まいの健康寿命診断」で活躍している測定機器について、
それぞれの役目をご紹介していきたいと思います。

 

「大工の七つ道具」ならぬ、「住まいの健康寿命診断士」の「五つ道具」

熱画像(サーモグラフィ)カメラ

人の健康診断に例えると、レントゲン撮影のようなものです。

 

物体の表面温度を撮影するのですが、
0.0005くらいの微小な温度変化を捉えて、
温度の低いところは青く、高いところは赤く表示されます。

屋根や外壁を撮影して、
表面的には見えなかった雨漏りを発見したり、
室内と室外の両方から壁を撮影して、
断熱材の効果を「可視化」することができます。

 

ファイバースコープ

人の健康診断に例えると、内視鏡と考えていただければ
イメージしやすいと思います。

 

5mmほどの隙間があれば、狭い場所でも鮮明に
画像として捉えることができます。

 

排水管の不具合の調査をしたり、床下などに使用して
シロアリの有無を調査したりするのに有効です。

 

木材水分計

木材の含水率(がんすいりつ)を調べる機器で、
木材にセンサーを当てると、
含水率(がんすいりつ)がパーセントで表示されます。

 

含水率(がんすいりつ)とは、
物質に含まれる水分の割合を示したものです。

 

 


昔ながらの自然乾燥の木材なら、
含水率(がんすいりつ)15%~20%が
良好な状態の目安になります。


 

 

スギやマツ、ヒノキなど粘りのある構造材や、
昔の木材は脂気があるので18%程度で十分だと考えます。

 

木材全体の水分バランスは、
リフォーム・リノベーションの施工時に
木材を再利用できるかどうかの判断材料の一つになります。

 

コンクリートの含水率(がんすいりつ)については、
コンクリート専用の水分計を使いますが、
建物に使うコンクリートの含水率は4~8%が適切とされます。

 

強度計、金属探知機

コンクリートは内部の状態を見ることができないので、
表面から強度計を使って強度を測定します。

 

また、コンクリート内部に鉄筋が入っているかどうかは、
電磁型の金属探知機や鉄筋探知機を使って確認します。

 

音波探傷器(おんぱたんしょうき)

鉄骨の接合部分の傷や不具合、
ボルトに緩みや歪みがないかなどを
調べることができます。

 

重量鉄骨造の建物は、地震の際に一点に集中して
応力(おうりょく)がかかるため、
鉄骨に曲がりが生じたり、接合部分に傷が入ったり、
ボルトが緩んだり、歪んだりするなどの症状が現れます。

 

応力(おうりょく)とは、
物体の内部に発生する力のことです。

 

鉄骨は熱に弱く、火災に遭うと極端に強度が落ちます。
表面的にはわからない強度を判断する
一つの材料になります。

 

「住まいの健康寿命診断結果」の活かし方

お住まいの状態を適切に把握すると、
必要なメンテナンスやリフォーム・リノベーションのために
どのような施工が必要で、どのくらいの費用がかかるのか、
見積もりをしたり、施工計画を立てたりすることができます。

リフォーム・リノベーションの施工で、
特に重要になるのは構造材の状態です。

 

現状のまま使える材料や補強すれば使える材料がどのくらいあるか、
将来的にあと何年くらい材料の耐久性があるか、などで
リフォーム・リノベーションにかかる費用も大きく変わります。

 

家族構成の変化があったり、趣味が増えたりすると
お家の使い方も、その時々に合わせて変わっていきます。

 

お住まいとの付き合い方は、人生設計にも大きく関わるため、
長期的な視点で考える必要があります

 

今回のコラムでは、お家の管理のためだけでなく、
お家を上手に活用するための「住まいの健康寿命診断」について
調査の進め方、調査に欠かせない5つの測定機器(五つ道具)などの
お話をしました。

 

日頃、ふくろうはうすが、ご相談を受けてから
どのような流れで診断させていただいているか
参考になれば嬉しいです。

 

ちなみに、「大工の七つ道具」とは
「ノコギリ・墨つぼ・カンナ・さしがね・ちょうな・
ゲンノウ(カナヅチ)・ノミ」のことです。

大工さんは、これらの道具を使い分け、使い込んで、
丈夫で美しい家を完成させていきます。

 

私、高橋は、七つ道具だけではなくこのような「五つ道具」も使いこなし、
綿密で正確な「住まいの健康寿命診断」を行っています。

 

お住まいの困りごと、お悩みのある方や
住まいの健康寿命診断」をご希望の方は
私、高橋まで、お気軽にご相談ください。

リフォーム・リノベーションの計画のある方も
お気軽にお問い合わせくださいね。

お問い合わせはこちら

 

次回は「大工職人の伝統的風習・年末のお礼奉公(おれいぼうこう)で2021年を締めくくる!」
というテーマでお話します。
読んでくださると嬉しいです。

 

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